過去問解説(企業経営理論)_2019年(令和元年) 第2問

難易度・正答率・重要度

  • 難易度: ★★☆☆☆(PPMの基本理解)
  • 正答率: ★★★★☆(正答率70%前後)
  • 重要度: ★★★☆☆(資源配分の代表モデル)

問題文

プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM)に関する記述として、最も適切なものはどれか。


プロダクト・ポートフォリオ・マネジメントでは、自社の事業の成長率と相対的な市場シェアとを基準として事業を分類し、戦略事業単位が他の戦略事業単位と製品や市場について相互に関連した統合的な戦略を持つ。
プロダクト・ポートフォリオ・マネジメントでは、成長市場で市場シェアを維持するために必要な再投資を大きく上回るキャッシュフローをもたらし、資金の投入によって競争優位を維持する「花形」よりも、資金の流出を削減して競争優位を獲得できる「問題児」の選択が重要である。
プロダクト・ポートフォリオ・マネジメントでは、「花形」は分野の将来性に大きな魅力があり、特定の事業に対する集中的な投資の主要な資金供給源としても重要であり、「負け犬」からの撤退を支える役割を果たす。
プロダクト・ポートフォリオ・マネジメントは、事業間のマーケティングや技術に関するシナジーが考慮されていないが、外部技術の導入によって規模の経済を達成することで優位性を構築する事業にも適用できる。
プロダクト・ポートフォリオ・マネジメントは、全社的な資源配分の論理の1つとして位置づけられ、成長率の鈍化した業界の「花形」事業の大きな余剰資金と「負け犬」を売却して得た資金を「金のなる木」に集中的に投入して競争優位を維持する。

出典: 中小企業診断協会|2019年度 第1次試験問題|企業経営理論(PDF)


解答

正解:エ


解説

ア:×
PPMは「市場成長率×相対市場シェア」でSBUを分類するが、事業間の統合戦略やシナジーは前提としていない。統合的戦略はPPMの枠外。

イ:×
「問題児」は資金流出が大きく、選択と集中の対象だが、重要性が「花形」より高いとはいえない。成長市場で優位維持に資金を要するのは「花形」であり、資金供給源は一般に「金のなる木」。

ウ:×
主要な資金供給源は「金のなる木」。花形は投資を要しキャッシュ創出は潤沢でも余剰になりにくい。負け犬撤退の支えにも通常は金のなる木の資金が充てられる。

エ:〇
PPMは事業間シナジーを考慮しない単純化モデルだが、外部技術導入で規模の経済を追求する事業にも分類・資源配分の指針として適用可能。

オ:×
余剰資金の投入先は「金のなる木」ではなく、一般に「花形」や有望な「問題児」への成長投資。金のなる木は資金供給源として維持が基本。


学習のポイント

  • PPMの基本軸:
    ・縦=市場成長率、横=相対市場シェア。
    ・花形=高成長・高シェア(投資継続)、金のなる木=低成長・高シェア(資金源)、問題児=高成長・低シェア(選択的投資/撤退)、負け犬=低成長・低シェア(撤退候補)。
  • PPMの位置づけ:
    ・全社戦略における資源配分の「出発点」として利用される。
    ・単純化されたフレームワークであるため、実際の戦略策定では他の分析手法と組み合わせる必要がある。
  • PPMの限界:
    ・事業間のシナジー(技術・ブランド・流通チャネルなど)を考慮できない。
    ・市場成長率や相対シェアだけでは将来性を十分に測れない。
    ・外部環境の変化(規制・技術革新・顧客嗜好の変化)を反映しにくい。
  • 補完的なフレームワーク:
    ・GE/マッキンゼーマトリクス:業界の魅力度と自社の競争力を軸に評価。
    ・コア・コンピタンス分析:自社の強みを基盤に事業展開を検討。
    ・シナジー評価:複数事業間の相乗効果を重視。
  • 試験対策のコツ:
    ・「花形=投資継続」「金のなる木=資金源」「問題児=選択と集中」「負け犬=撤退候補」と整理。
    ・PPMは「資源配分の論理」であり、シナジーや競争戦略の具体策は別のフレームで補うと理解しておく。