難易度・正答率・重要度
- 難易度: ★★☆☆☆(コア・コンピタンスの基本)
- 正答率: ★★★★☆(正答率70%前後)
- 重要度: ★★★☆☆(成長源泉の理解)
問題文
G.ハメルとC.K.プラハラードによるコア・コンピタンスに関する記述として、最も適切なものはどれか。
ア
コア・コンピタンスは、企業内部で育成していくものであるため、コア・コンピタンスを構成するスキルや技術を使った製品やサービス間で競争が行われるものの、コア・コンピタンスの構成要素であるスキルや技術を獲得するプロセスで企業間の競争が起きることはない。
イ
コア・コンピタンスは、企業の未来を切り拓くものであり、所有するスキルや技術が現在の製品やサービスの競争力を支えていることに加えて、そのスキルや技術は将来の新製品や新サービスの開発につながるようなものであることが必要である。
ウ
コア・コンピタンスは、顧客が認知する価値を高めるスキルや技術の集合体であるから、その価値をもたらす個々のスキルや技術を顧客も理解していることが必要である。
エ
コア・コンピタンスは、他の競争優位の源泉となり得る生産設備や特許権のような会計用語上の「資産」ではないので、貸借対照表上に表れることはなく、コア・コンピタンスの価値が減少することもない。
オ
コア・コンピタンスは、ユニークな競争能力であり、個々のスキルや技術を束ねたものであるから、束ねられたスキルや技術を独占的に所有していることに加えて、競合会社の模倣を避けるために個々のスキルや技術も独占的に所有していることが必要である。
出典: 中小企業診断協会|2019年度 第1次試験問題|企業経営理論(PDF)
解答
正解:イ
解説
ア:×
企業はコア・コンピタンスの構成要素(スキル・技術・知識)獲得や育成で競争する。獲得・学習・提携・M&Aなどのプロセス自体が競争領域であり、「競争が起きない」は誤り。
ウ:×
顧客はコンピタンスの中身を逐一理解していなくても、結果としての価値(品質・機能・体験)を知覚すればよい。内部能力の詳細理解は顧客側の必須条件ではない。
エ:×
コア・コンピタンスは会計資産に限られない無形の集合能力であり、環境変化や模倣により価値は減衰しうる。「価値が減少しない」は不適切。
オ:×
重要なのは独占所有よりも「模倣困難性」「多市場展開可能性」「顧客価値貢献」。個々のスキルの独占が必須という記述は過剰。
イ:〇
現在の競争力を支え、将来の新製品・新サービスの創出にも結びつく「事業横断で活用可能な中核能力」という定義に合致。
学習のポイント
- コア・コンピタンスの三要件:
・顧客価値への重要な貢献(最終製品の価値を高める)。
・多様な市場へのアクセス(複数事業で活用可能)。
・模倣困難性(競合に真似されにくい)。 - 試験対策のコツ:
会計資産=コア・コンピタンスではない点、顧客が内部能力の詳細を理解する必要はない点、現在と将来の両方に効く「中核能力」である点を整理して覚える。