過去問解説(企業経営理論)_2019年(令和元年) 第8問

難易度・正答率・重要度

  • 難易度: ★★★☆☆(情報財の特性と戦略)
  • 正答率: ★★★☆☆(正答率60%前後)
  • 重要度: ★★★☆☆(デジタル経済の基礎理解)

問題文

次の文章を読んで、下記の設問に答えよ。

コンピュータのソフトウェアやコンテンツなどのデジタル化された情報財は、製品開発費などの固定費が占める比率がく、製品1単位を追加的に生産するためにかかる費用がい傾向があるという特性を有している。
こうした情報財の特性は、製品市場での競争状況や、その状況に基づく競争戦略に影響を与える。特に重要なのは、複数の企業が同様の情報財を供給して、コモディティ化が生じる場合、たとえ当該市場が成長段階にあったとしても、企業間での競争が激化して、最終的にはの水準まで価格が低下してしまう点にある。
そのために、デジタル化された情報財では、その特性を勘案した競争戦略によって、コストリーダーシップや製品差別化を実現することで、コモディティ化に伴う熾烈な価格競争を回避すべきだとされる。例えば、パソコンのオペレーティング・システム(OS)の場合、支配的な地位を確立した企業は、ユーザー数の多さが当該製品の便益の増大につながるなどを背景として、持続的な競争優位を獲得してきた。

(設問1)

文中の空欄A~Cに入る語句の組み合わせとして、最も適切なものはどれか。

A:高  B:低  C:機会費用
A:高  B:低  C:限界費用
A:高  B:低  C:固定費
A:低  B:高  C:機会費用
A:低  B:高  C:限界費用

(設問2)

文中の空欄Dに入る語句として、最も適切なものはどれか。

オープン・イノベーション
デジュール標準
ネットワーク外部性
リバース・イノベーション
リバース・エンジニアリング

出典: 中小企業診断協会|2019年度 第1次試験問題|企業経営理論(PDF)


解答

  • 設問1:イ
  • 設問2:ウ

解説

(設問1)

ア:×
機会費用ではなく、価格は限界費用水準まで低下するのが情報財の特徴。

イ:〇
情報財は「固定費が高く、限界費用が低い」構造を持つ。コモディティ化すると価格は限界費用に収束する。

ウ:×
価格が固定費水準まで下がることはない。固定費は回収困難になるリスク要因。

エ・オ:×
情報財は「固定費高・限界費用低」が本質。逆の組み合わせは誤り。

(設問2)

ア:×
オープン・イノベーションは外部知識活用の枠組みであり、ここでの文脈には合わない。

イ:×
デジュール標準は公的に定められた標準。OSの普及は市場での利用者数に依存するため異なる。

ウ:〇
ネットワーク外部性=利用者数が増えるほど便益が増大する効果。OSやSNSなど典型例。

エ:×
リバース・イノベーションは新興国発のイノベーションを先進国に展開する概念。

オ:×
リバース・エンジニアリングは製品解析の手法であり、競争優位の説明には不適切。


学習のポイント

  • 情報財のコスト構造:
    ・固定費(開発費)が高い。
    ・限界費用(追加生産費用)が極めて低い。
    ・競争が進むと価格は限界費用に収束。
  • 戦略的含意:
    ・差別化やブランド構築でコモディティ化を回避。
    ・ネットワーク外部性を活かすことで持続的優位を確立。
  • 試験対策のコツ:
    「固定費高・限界費用低」「価格は限界費用に収束」「ネットワーク外部性が鍵」と整理して覚える。