過去問解説(企業経営理論)_2019年(令和元年) 第9問

難易度・正答率・重要度

  • 難易度: ★★☆☆☆(普及理論の要点)
  • 正答率: ★★★★☆(正答率70%前後)
  • 重要度: ★★★☆☆(キャズムの核心理解)

問題文

新製品や新サービスを受け入れる市場が一様ではなく、いくつかの異なったグループによって構成されているとする考え方に、市場をマニア・マーケットと大衆マーケットとに分けて市場の顧客層の質的な違いに着目するキャズム(Chasm:市場の断層)の理論がある。

キャズムの理論に関する記述として、最も適切なものはどれか。


キャズムの理論では、大衆マーケットにおける新製品や新サービスの急成長は、目利きの層(アーリー・アドプター)と流行を後追いする層(レイト・マジョリティー)に対し、並行的に受け入れられる必要がある。
キャズムの理論では、大衆マーケットを構成する流行に敏感な層(アーリー・マジョリティー)にいかに受け入れられ、その需要を喚起するかが課題となる。
キャズムの理論では、大衆マーケットを構成する流行を後追いする層(レイト・マジョリティー)には受け入れられても、無関心の層(ラガード)に受け入れられるかどうかが問題となる。
キャズムの理論では、まずマニア・マーケットを構成する新しいモノ好きの層(イノベーター)と無関心の層(ラガード)とに受け入れられることが必要である。
キャズムの理論では、マニア・マーケットを構成する新しいモノ好きの層(イノベーター)に受け入れられ、いかに目利きの層(アーリー・アドプター)の反応を推測するかが問題となる。

出典: 中小企業診断協会|2019年度 第1次試験問題|企業経営理論(PDF)


解答

正解:イ


解説

ア:×
 キャズムはアーリー・アドプターからアーリー・マジョリティーへ橋渡しする「断層」を指す。レイト・マジョリティーとの並行受容は核心ではない。

イ:〇
 成長の鍵は大衆市場の中心であるアーリー・マジョリティーの受容獲得。製品を「ホールプロダクト化」し、参照事例や信頼性で需要を喚起することが課題。

ウ:×
 ラガードへの受容は普及末期の話で、キャズムの焦点はレイト・マジョリティーより前段階のアーリー・マジョリティーへの拡張。

エ:×
 イノベーターとラガードは両極。ラガードは無関心・懐疑的で初期受容の対象ではない。

オ:×
 初期市場のイノベーター受容から、目利きのアーリー・アドプターはすでに続く段階。問題はその先の大衆市場(アーリー・マジョリティー)への越境。


学習のポイント

  • 市場区分の流れ:
    イノベーター → アーリー・アドプター →(キャズム)→ アーリー・マジョリティー → レイト・マジョリティー → ラガード。
  • 橋渡し戦略の要点:
    ・ホールプロダクト(補完サービス・サポート・周辺機能)で不確実性を解消。
    ・事例・同業参照・導入リスク低減(保証・互換性)で採用を促進。
    ・ポジショニングを「ビジョナリー好み」から「実用志向」に調整。