過去問解説(企業経営理論)_2019年(令和元年) 第13問

難易度・正答率・重要度

  • 難易度: ★★★☆☆(情報処理モデルの応用)
  • 正答率: ★★★☆☆(正答率60%前後)
  • 重要度: ★★★☆☆(組織デザイン理論の基礎)

問題文

情報処理モデルに従って組織構造をデザインする際には、情報処理の必要性が不確実性(uncertainty)の除去に関わるものなのか、多義性(equivocality)の除去に関わるものなのかによって、必要となるコミュニケーションメディアのリッチネスや調整メカニズムが異なる。

情報処理の必要性とコミュニケーションメディアのリッチネス、調整メカニズムに関する記述として、最も適切なものはどれか。


新たなアイデアを生み出すために部門間調整を行う際、多義性の除去が必要になるときには、コミュニケーションの冗長性を排除し、効率的な調整メカニズムを確保する必要がある。
環境の新しい意味や価値の変化を知るには、多義性よりも不確実性の除去が重要なので、アンケート調査のような手法が有効である。
環境の質的な変化は、組織部門間での多義性の除去の必要性を増加させるので、部門間でのフェイス・ツー・フェイスコミュニケーションなどのリッチなコミュニケーションメディアを利用した調整メカニズムが必要になる。
コミュニケーションメディアをリッチなものにするためには、迅速なフィードバック、明確に定義された言語による報告書、複数のチャネルの確保が必要である。
不確実性は情報量の不足を意味するので、リッチなコミュニケーションメディアを活用する必要性があり、より多くの情報を収集・処理するために職能別専門化を追求した組織構造を設計することが望ましい。

出典: 中小企業診断協会|2019年度 第1次試験問題|企業経営理論(PDF)


解答

正解:ウ


解説

ア:×
多義性の除去には効率性よりも「解釈の共有」が重要。冗長性を排除するのではなく、むしろ多様な視点を取り入れる必要がある。

イ:×
環境の新しい意味や価値の変化は「多義性」の問題。アンケート調査のような定量的手法は不確実性の除去には有効だが、多義性の解消には不十分。

ウ:〇
環境の質的変化は多義性を増大させるため、フェイス・ツー・フェイスや会議などリッチなコミュニケーションメディアを用いた調整が必要。

エ:×
リッチなメディアの特徴は「即時フィードバック」「多様な手がかり」「自然言語」「個別対応」。報告書のような明確に定義された言語はむしろリッチネスが低い。

オ:×
不確実性は情報不足の問題であり、リッチなメディアではなく「情報量の増加」で対応可能。職能別専門化はむしろ情報の断片化を招きやすい。


学習のポイント

  • 不確実性(uncertainty):
    ・情報量の不足。
    ・解決策=情報収集・分析(例:調査、統計)。
  • 多義性(equivocality):
    ・意味の多様性・解釈の不一致。
    ・解決策=リッチなコミュニケーション(例:対面会議、ディスカッション)。
  • リッチなメディアの特徴:
    ・即時フィードバックが可能。
    ・多様な手がかり(表情・声のトーンなど)。
    ・自然言語でのやり取り。
    ・個別対応が可能。
  • 試験対策のコツ:
    「不確実性=情報不足→情報量で解決」「多義性=解釈の不一致→リッチなメディアで解決」と整理して覚える。