難易度・正答率・重要度
- 難易度: ★★★☆☆(価格弾力性・価格戦略)
- 正答率: ★★★☆☆(正答率60%前後)
- 重要度: ★★★☆☆(価格設定の基礎理論)
問題文
次の文章を読んで、下記の設問に答えよ。
原油や原材料価格の低下、あるいは革新的技術の普及は、製造ならびに製品提供にかかる変動費を減少させるため、販売価格の引き下げが検討されるが、価格を下げることが需要の拡大につながらないケースもある。企業は、①需要の価格弾力性や交差弾力性を確認したり、②競合他社の動向や顧客の需要を分析、考慮したりして、価格を決定する。
(設問 1)
文中の下線部①に関する記述として、最も適切なものはどれか。
ア
企業は、製品Aの価格変化が製品Bの販売量にもたらす影響について、交差弾力性の値を算出し確認する。具体的には、製品Aの価格の変化率を、製品Bの需要量の変化率で割った値を用いて判断する。
イ
牛肉の価格の変化が豚肉や鶏肉の需要量に、またコーヒー豆の価格の変化がお茶や紅茶の需要量に影響することが予想される。これらのケースにおける交差弾力性は負の値になる。
ウ
消費者が品質を判断しやすい製品の場合には、威光価格が有効に働くため、価格を下げることが需要の拡大につながるとは限らない。
エ
利用者層や使用目的が異なるため、軽自動車の価格の変化は、高級スポーツカーの需要量には影響しないことが予想される。こうしたケースの交差弾力性の値は、ゼロに近い。
(設問 2)
文中の下線部②に関する記述として、最も適切なものはどれか。
ア
ウイスキー、ネクタイ、スーツなどの製品では、低価格の普及品から高価格の高級品までのバリエーションを提供することがある。このように、複数の価格帯で製品展開することを「プライス・ライニング戦略」と呼ぶ。
イ
短期間で製品開発コストを回収することを目指して設定された高い価格を「スキミング価格」と呼ぶ。このような価格設定は、模倣されやすい新製品に最適である。
ウ
発売当日に CD や DVD を入手することに強いこだわりを持ち、価格に敏感ではない熱狂的なファンがいる。新製品導入にあたり、こうした層に対して一時的に設定される高価格を「サブスクリプション価格」と呼ぶ。
エ
若者にスノーレジャーを普及させるために、多くのスキー場は、往復交通費にウェアやスノーボードのレンタル料やリフト券を組み合わせた「キャプティブ価格」を設定し、アピールしている。
出典: 中小企業診断協会|2019年度 第1次試験問題|企業経営理論(PDF)
解答
- 設問1:エ
- 設問2:ア
解説
【設問1】
ア:×
交差弾力性は「製品Bの需要量の変化率/製品Aの価格の変化率」で算出する。記述の割り算の向きが逆。
イ:×
代替関係(牛肉と豚肉、コーヒーと紅茶)では、交差弾力性は正の値になりやすい。
ウ:×
威光価格は品質判断が難しい場合に「高価格=高品質」と知覚されやすい効果。品質を判断しやすい製品では効きにくい。
エ:〇
利用者層・用途が大きく異なる市場間では互いに独立性が高く、交差弾力性はゼロ近傍と評価される。
【設問2】
ア:〇
複数の価格帯で製品ラインを構成する戦略はプライス・ライニング。顧客層別に明確な価格レンジを用意する。
イ:×
スキミング価格は参入障壁が高く模倣されにくい新製品に適する。模倣されやすい場合はペネトレーション価格が有効。
ウ:×
一時的な高価格はプレミアム価格やスキミングの文脈。サブスクリプション価格は定期課金モデルのこと。
エ:×
複数要素のバンドル提供はパッケージ価格やバンドル価格。キャプティブ価格は本体と専用消耗品の組み合わせ(例:プリンターとインク)。
学習のポイント
- 需要・交差弾力性
・交差弾力性=代替なら正、補完なら負、無関係ならゼロ近傍。
・算式は「他財の需要変化率/自財の価格変化率」。 - 価格戦略の用語整理
・プライス・ライニング:価格帯別にライン構成。
・スキミング:模倣困難・差別化強い新製品に高価格。
・ペネトレーション:普及重視で低価格導入。
・キャプティブ:本体+専用消耗品で収益化。
・サブスクリプション:定期課金モデル。