過去問解説(企業経営理論)_2019年(令和元年) 第32問

難易度・正答率・重要度

  • 難易度: ★★★☆☆(製品開発プロセス・調査法・分析法)
  • 正答率: ★★★☆☆(正答率60%前後)
  • 重要度: ★★★☆☆(マーケティングリサーチの基礎)

問題文

次の文章を読んで、下記の設問に答えよ。

製品開発を効果的に行うために、多くの場合、企業担当者は①製品開発プロセスを段階的に管理・実行している。それぞれの段階において、②調査や実験を行い、③それぞれの分析結果に基づき意思決定を繰り返すことで、新製品の成功確率を高めるよう努めている。

(設問 1)

文中の下線部①に関する記述として、最も適切なものはどれか。

「アイデア・スクリーニング」において、新製品アイデアが多い場合でも取捨選択は十分に時間をかけて慎重に行うべきである。
「市場テスト」では、実験用仮設店舗を用いて消費者の反応を確認するよりも、実際の市場環境で十分な時間や予算を投入して製品やマーケティング施策をテストするべきである。
開発中の製品および当該製品と競合する既存製品を対象に、消費者の「知覚マップ」を作成した場合、開発中の製品が空白領域に位置づけられたとしても、その製品に消費者ニーズや市場性があるとは限らない。
新製品アイデアのスクリーニングの次に、アイデアを具現化させるための試作品開発段階である「プロトタイピング」に移る。製品アイデアを具体的な製品属性に落とし込む作業であるため、通常、技術担当者に全権が委ねられる。
新製品開発に際して、市場規模を推定することは、製品開発の実現に投じる費用を誤って算定することにつながるため、不要である。

(設問 2)

文中の下線部②の調査や実験におけるデータ収集方法に関する記述として、最も適切なものはどれか。

観察法には、実験的条件下の調査対象者の行動を観察する方法や、調査者自らが体験しその体験自体を自己観察する方法が含まれる。
グループインタビューの司会者は、複数の参加者と均一な距離を保つことが求められる。共感を示したり、友好的関係を築こうとしたりしないほうがよい。
デプスインタビューでは、考え方や価値観、行動スタイル、嗜好などを聞くことが可能である。また、グループインタビューと比較すると、他の参加者の影響を受けにくく、一人当たりの調査コスト(金銭および時間)は低い。
リード・ユーザー法は、例えば、市場の規模や競合に対する競争力を確認するために、主として検証的調査で用いられる。

(設問 3)

文中の下線部③の分析方法に関する記述として、最も適切なものはどれか。

2つの要素間の因果関係は、相関係数を算出することによって確認できる。
異なる性質を持つ対象が混在しているとき、クラスター分析を用いて、似ている対象から構成される相互に排他的なグループに分類することがある。
順序尺度で測定された回答の集計では、一般的に、中央値と平均値が算出される。
例えば、特定店舗での消費金額に男女で差があるのかを確認したいときには、男女それぞれが消費する金額の平均値を求め、それらの平均値の間に統計的有意差があるといえるのかを、カイ二乗検定を用いて調べるとよい。

出典: 中小企業診断協会|2019年度 第1次試験問題|企業経営理論(PDF)


解答

  • 設問1:ウ
  • 設問2:ア
  • 設問3:イ

解説

【設問1】
ア:×
アイデア・スクリーニングは効率的に行う必要があり、時間をかけすぎるのは不適切。

イ:×
市場テストは実際の市場環境で大規模に行うとコストが高く、競合に情報が漏れるリスクもある。

ウ:〇
知覚マップで空白領域に位置しても、必ずしも市場性があるとは限らない。空白は「未充足ニーズ」か「需要が存在しない領域」かを見極める必要がある。

エ:×
プロトタイピングは技術担当者だけでなく、マーケティングやデザインなど多部門が関与する。

【設問2】

ア:〇
観察法には「実験的条件下での行動観察」や「自己観察」が含まれる。調査者が自ら体験し、その体験を観察対象とする方法も観察法の一種である。

イ:×
グループインタビューの司会者は、参加者との信頼関係を築き、自由に意見を引き出すことが重要。共感を示さないのは不適切。

ウ:×
デプスインタビューは一対一で深掘りするため、他者の影響を受けにくいが、コストはむしろ高い。低コストという記述は誤り。

エ:×
リード・ユーザー法は、先進的なニーズを持つユーザーからアイデアを得る探索的調査手法。市場規模や競争力の検証には用いられない。


【設問3】

ア:×
相関係数は「相関関係」を示すが、因果関係を証明するものではない。

イ:〇
クラスター分析は、類似性に基づいて対象をグループ化する多変量解析手法。異質な集団を同質的なクラスターに分類できる。

ウ:×
順序尺度では中央値や最頻値が適切。平均値は算出できるが意味を持たない場合が多い。

エ:×
平均値の差の検定にはt検定や分散分析を用いる。カイ二乗検定はカテゴリーデータに適用する。


学習のポイント

  • 製品開発プロセス
    ・段階的に進める「ステージゲート方式」が一般的。
    ・知覚マップの空白=必ずしも市場機会ではない。
  • 調査法
    ・観察法=行動観察+自己観察。
    ・デプスインタビュー=深掘りだがコスト高。
    ・リード・ユーザー法=先進的ユーザーからの探索的調査。
  • 分析法
    ・相関≠因果。
    ・クラスター分析=類似性に基づく分類。
    ・順序尺度=中央値・最頻値が適切。
    ・平均値差の検定=t検定、ANOVA。
  • 試験対策のコツ
    ・「知覚マップの空白=市場性あり」と短絡しない。
    ・観察法の範囲に「自己観察」が含まれる点を押さえる。
    ・デプスインタビューはコスト高であることに注意。
    ・相関と因果の違いを明確に区別する。
    ・クラスター分析=分類手法、カイ二乗検定=カテゴリーデータ用、と整理して覚える。