過去問解説(企業経営理論)_2019年(令和元年) 第33問

難易度・正答率・重要度

  • 難易度: ★★☆☆☆(サービスマーケティングの基礎)
  • 正答率: ★★★★☆(正答率70%前後)
  • 重要度: ★★★☆☆(サービス特性の理解)

問題文

次の文章を読んで、下記の設問に答えよ。

サービス財には、①無形性、品質の変動性、不可分性、消滅性、需要の変動性といった特徴がある。②サービス組織やサービス提供者は、これらの特徴を踏まえた対応が求められる。

(設問 1)

文中の下線部①に関する記述として、最も適切なものはどれか。

「品質の変動性」の対応として、企業には慎重な従業員採用や教育の徹底が求められる。しかしながら、それに代わる機械の導入はサービスの均一化につながり、必然的に顧客の知覚品質は低下する。
「不可分性」といった特性により、サービス財の流通において、中間業者を活用することができない。そのため、サービス業のチャネルは、有形財と比較して、短く単純なものになる。
情報管理システムや AI 技術を用いることで、需要に応じてフレキシブルに価格を変動させることが容易になった。「消滅性」「需要の変動性」の対応策として、サービス業者は、これらの仕組みを用いて思い切った値引きを行うべきである。
美容室のように人が顧客に提供するサービスは、「無形性」「不可分性」を有するため、在庫を持つことや生産場所から他の場所に移動させることが困難である。

(設問 2)

文中の下線部②に関する記述として、最も適切なものはどれか。

「サービス・トライアングル」は、顧客・サービス提供者・企業の 3 者の関係性を図示している。中でも顧客とサービス提供者の関係をより密接なものにすることの重要性を説いている。
「サービス・プロフィット・チェーン」は、顧客満足が顧客ロイヤルティにつながることで事業の収益性が高まることに注目し、企業が顧客に目を向けることの重要性を強調している。
「逆さまのピラミッド」の図では、マネジャーは現場スタッフを支援する立場にあり、両者の権限関係が製造業と逆転していることが示されている。
「真実の瞬間」とは、適切なサービスを、顧客が望むタイミングで提供することの重要性を示す概念である。
サービス品質の計測尺度である「サーブクォル(SERVQUAL)」では、サービス利用前と利用後の 2 時点で評価を計測し、それらの差を確認することが推奨されている。

出典: 中小企業診断協会|2019年度 第1次試験問題|企業経営理論(PDF)


解答

  • 設問1:エ
  • 設問2:オ

解説

【設問1】

ア:×
機械化やシステム導入はサービスの均一化に寄与し、必ずしも顧客知覚品質を低下させるわけではない。

イ:×
サービス財でも代理店やフランチャイズなど中間業者を活用できる。不可分性は「生産と消費が同時」であることを指す。

ウ:×
値引きは一つの対応策だが、必ずしも「思い切った値引き」が最適ではない。収益性を損なう可能性がある。

エ:〇
美容室のようなサービスは「無形性」「不可分性」を持ち、在庫化や移動が困難である。


【設問2】

ア:×
サービス・トライアングルは「企業・従業員・顧客」の三者関係を示すが、特定の関係だけを強調するものではない。

イ:×
サービス・プロフィット・チェーンは「従業員満足→サービス品質→顧客満足→収益性」の連鎖を強調する。顧客だけに目を向けるものではない。

ウ:×
逆さまのピラミッドは「顧客が頂点」であり、マネジャーは現場スタッフを支援する立場だが、製造業との単純な逆転を示すものではない。

エ:×
真実の瞬間は「顧客と接触する瞬間がサービス評価を決定づける」という概念。タイミングだけを意味するものではない。

オ:〇
SERVQUALは「期待(利用前)」と「知覚(利用後)」の差を測定する尺度。信頼性・応答性・確実性・共感性・有形性の5次元で評価する。


学習のポイント

  • サービスの特性
    ・無形性:形がなく在庫できない。
    ・不可分性:生産と消費が同時。
    ・変動性:提供者や状況により品質が変わる。
    ・消滅性:在庫できず、未使用は消滅。
    ・需要変動性:需要が時間や状況で変動。
  • サービス品質の評価
    ・SERVQUAL=期待と知覚の差を測定。
    ・5次元(信頼性・応答性・確実性・共感性・有形性)。
  • 試験対策のコツ
    ・「不可分性=中間業者不可」は誤り。
    ・「真実の瞬間=顧客接点の重要性」と覚える。
    ・「サービス・プロフィット・チェーン=従業員満足から始まる連