過去問解説(経済学・経済政策)_2019年(R1年) 第5問

難易度・正答率・重要度

  • 難易度: ★★★☆☆(乗数効果とADの構造理解)
  • 正答率: ★★★☆☆(式と図の対応が鍵)
  • 重要度: ★★★★☆(政策効果の理解に直結)

問題文

下図は、開放経済における生産物市場の均衡を表す45度線図である。直線ADは総需要線であり、総需要ADは以下によって表される。

総需要(AD)=消費(C)+投資(I)+政府支出(G)+輸出(X)−輸入(M)
消費(C)=基礎消費(C̄)+限界消費性向(c)×(所得(Y)−租税(T))
投資(I)=独立投資(Ī)−利子率(r)に対する感応度(b)×利子率(r)
輸入(M)=限界輸入性向(m)×所得(Y)

(注:限界消費性向cは0より大きく1未満、限界輸入性向mも0より大きくcより小さい、bは0より大きい) この図に基づいて、下記の設問に答えよ。

(設問1)

総需要線がAD₀からAD₁にシフトするときの乗数効果はEEABによって表される。乗数効果を小さくするものとして、最も適切なものの組み合わせを下記の解答群から選べ。

限界消費性向の上昇
限界消費性向の低下
限界輸入性向の上昇
限界輸入性向の低下

〔解答群〕

aとc
aとd
bとc
bとd

(設問2)

均衡GDPは45度線と総需要線の交点によって与えられる。均衡GDPの変化に関する記述として、最も適切なものはどれか。

減税は、総需要線の傾きを急にすることを通じて、均衡GDPを増やす。
政府支出の拡大は、総需要線の上方への平行移動を通じて、均衡GDPを増やす。
輸出の減少は、総需要線の傾きを緩やかにすることを通じて、均衡GDPを減らす。
利子率の上昇は、総需要線の上方への平行移動を通じて、均衡GDPを増やす。

出典:中小企業診断協会|2019年度 第1次試験問題|経済学・経営政策(PDF)

解答

  • 設問1:ウ(bとc)
  • 設問2:イ

解説

設問1:乗数効果を小さくする要因

乗数効果とは、政府支出や投資などの初期注入が、消費や所得の連鎖を通じてどれだけGDPを拡大させるかを示すものです。

  • 限界消費性向(c)が高いほど、所得が消費に回りやすく、乗数は大きくなります。
  • 限界輸入性向(m)が高いほど、所得が海外に流出しやすく、国内乗数は小さくなります。

よって、乗数を小さくするのは:

  • b:限界消費性向の低下(消費が増えにくくなる)
  • c:限界輸入性向の上昇(国内に波及しにくくなる)

→ 正解は「ウ(bとc)


設問2:均衡GDPの変化

均衡GDPは、総需要線と45度線の交点で決まります。

  • 政府支出(G)の拡大は、総需要線のすべての点を上方に押し上げるため、線が平行移動し、交点が右に移動 → GDP増加。
  • 減税は可処分所得を増やし、消費を増やすが、傾きが変わるとは限らない。
  • 輸出の減少は、総需要線の切片を下げる(傾きではない)。
  • 利子率の上昇は投資を減らし、総需要線を下方に移動させる → GDP減少。

→ 正解は「イ(政府支出の拡大は、総需要線の上方への平行移動を通じて、均衡GDPを増やす)」


学習ポイント

  • 総需要の構成要素を分解して理解することが、政策効果の分析に不可欠。
  • 限界性向(消費・輸入)の変化は、乗数効果に直結する。
  • 総需要線の「傾き」と「平行移動」の違いを明確に区別すること。