過去問解説(経営法務)_2020年(R2年) 第4問

難易度・正答率・重要度

  • 難易度:★★★☆☆(制度の趣旨と手続き期限の理解が必要。)
  • 正答率:★★★☆☆(正答率50〜70%。標準的な難易度。)
  • 重要度:★★★☆☆(限定承認は頻度は低いが制度理解として重要。)

問題文

民法においては、相続によって得た財産の限度においてのみ被相続人の債務及び遺贈を弁済すべきことを留保して、相続の承認をする「限定承認」が定められている。この限定承認に関する記述として、最も適切なものはどれか。
なお、本問においては、法定単純承認事由は発生しておらず、また、相続放棄者、相続廃除者、相続欠格者はおらず、遺産分割協議は成立していないものとする。


限定承認者は、限定承認に関する公告期間の満了前であっても、主要な相続債権者及び遺贈者に対しては一切弁済を拒むことはできず、これらの者から請求があれば、相続財産を超える部分についても、その全額を弁済しなければならない。
限定承認者は、限定承認をしたあと1年以内であれば、その理由を問わず、撤回することができる。
限定承認は、家庭裁判所において伸長がなされない限り、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内にしなければならない。
限定承認は、相続人が数人あるときであっても、共同相続人のうち一人が単独で行わなければならず、共同相続人の全員が共同して行うことはできない。

出典:中小企業診断協会|2020年度 第1次試験問題|経営法務(PDF)


解答

正解:ウ
限定承認は、家庭裁判所において伸長がなされない限り、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内にしなければならない。


解説

ア:×
限定承認者は、相続財産の限度で債務を弁済する責任を負うため、相続財産を超える部分については弁済義務を負わない。記述は誤り。

イ:×
限定承認は撤回できる場合があるが、無制限に1年以内であれば理由を問わず撤回できるわけではない。記述は誤り。

ウ:〇
限定承認は、原則として相続開始を知った時から3か月以内に家庭裁判所に申述しなければならない。期間の伸長が認められる場合を除き、期限を過ぎると単純承認とみなされる。正しい記述。

エ:×
限定承認は、共同相続人がいる場合は全員が共同して行う必要がある。一人で単独に行うことはできない。記述は誤り。


学習のポイント

  • 限定承認は、相続財産の範囲内で債務を弁済する制度。
  • 申述期限は原則3か月以内。伸長には家庭裁判所の許可が必要。
  • 相続人が複数いる場合は、全員が共同して限定承認を行う。
  • 相続財産を超える債務については弁済義務を負わない。