難易度・正答率・重要度
- 難易度:★★★★☆(機関設計と定款変更の理解が必要。)
- 正答率:★★★☆☆(正答率50〜70%。標準的な難易度。)
- 重要度:★★★★☆(中小企業の機関設計に関する実務的論点。)
問題文
以下の会話は、X株式会社(以下「X社」という。)の取締役甲氏と、中小企業診断士であるあなたとの間で行われたものである。この会話を読んで、下記の設問に答えよ。
なお、X社は、会社法上の大会社ではなく、かつ公開会社ではない。
甲氏:「X社は、これまで、私一人が取締役として事業を行っていましたが、今後、会社を大きくしたいので、まず手始めに取締役の人数を増やしたいと思っています。株式会社の機関設計には、いろいろな組み合わせがあると聞いて悩んでいます。どうしたらよいでしょうか。」
あなた:「取締役会を設置するかについては、どのように考えていますか。」
甲氏:「取締役会を設置したいと考えています。」
あなた:「そうすると、X社では、取締役会を設置するということなので、A。監査役については、何か考えていますか。」
甲氏:「まだ、どうしたらいいのか決めていません。どうすればよいですか。」
あなた:「会計参与や会計監査人を置くことは考えていますか。」
甲氏:「いいえ。知り合いの会社でも会計参与や会計監査人は置いていないと聞きましたので、X社でも、置かないこととしたいです。」
あなた:「現在、X社の定款では、全ての株式の譲渡には株主総会の承認を必要とすると定めていますが、これを変更することは考えていますか。」
甲氏:「取締役会を設ける予定のため、全ての株式の譲渡制限については、取締役会の承認を必要とするという定款の定めに変更しようと思っています。」
あなた:「これまでのお話をまとめると、今後、X社は、取締役会を設置する、会計参与や会計監査人は設置しない、定款で全ての株式に譲渡制限に関する定めを置くという会社にするということでよいですか。」
甲氏:「はい、そうです。」
あなた:「そうすると、X社では、B。」
(設問1)
会話の中の空欄Aに入る記述として、最も適切なものはどれか。
(設問2)
会話の中の空欄Bに入る記述として、最も適切なものはどれか。
出典:中小企業診断協会|2020年度 第1次試験問題|経営法務(PDF)
解答
設問1:ウ
設問2:ア
解説
【設問1】
ア:×
取締役は自然人でなければならず、法人は就任できない。記述は誤り。
イ:×
取締役会を設置するには、取締役が3人以上必要。2人では足りない。記述は誤り。
ウ:〇
会社法上、取締役会設置会社は、取締役を3人以上置く必要がある。正しい記述。
エ:×
社外取締役の設置義務は、大会社かつ公開会社などに限定される。X社は非公開・非大会社のため不要。記述は誤り。
【設問2】
ア:〇
監査役会を設置しない場合、定款で監査役の権限を会計監査に限定することが可能。正しい記述。
イ:×
監査役会を設置する場合、社外監査役の設置が必要。記述は誤り。
ウ:×
指名委員会等設置会社や監査等委員会設置会社は、公開会社かつ大会社に限られる。X社には該当しない。記述は誤り。
エ:×
取締役会設置会社では、監査役の設置が義務付けられる。設置しないことはできない。記述は誤り。
学習のポイント
- 取締役会設置には、取締役3名以上が必要。
- 取締役は自然人に限られ、法人は就任不可。
- 非公開・非大会社では社外取締役・社外監査役の設置義務はない。
- 監査役会を設置しない場合、定款で監査権限を限定できる。
- 取締役会設置会社では、監査役の設置が必須。