難易度・正答率・重要度
- 難易度:★★★☆☆(職務著作の定義と効果の理解が必要。)
- 正答率:★★★☆☆(正答率50〜70%。標準的な難易度。)
- 重要度:★★★★☆(著作権の帰属は実務でも重要な論点。)
問題文
以下の会話は、C株式会社の代表取締役甲氏と、中小企業診断士であるあなたとの間で行われたものである。
会話の中の空欄AとBに入る記述の組み合わせとして、最も適切なものを下記の解答群から選べ。
甲氏:「当社が製造販売するアイスキャンディーに使っている恐竜のキャラクター『ガリガリザウルス』をご存じですよね。いま、すごく人気が出ているのですが、このフィギュアやステッカーを作って販促品にしようと思っています。そこで、あらためて、このキャラクターの著作権が誰のものか気になって、相談したいのです。」
あなた:「その『ガリガリザウルス』の絵柄は、どなたが描いたのですか。」
甲氏:「当社の商品開発部が考えた商品コンセプトに基づいて、パッケージデザインを担当する宣伝部の若手社員が業務として描き下ろしたものです。」
あなた:「そういうことでしたら、その絵柄は職務著作に該当しそうですね。」
甲氏:「その職務著作とやらに該当したら、『ガリガリザウルス』の絵柄の著作権は、誰の権利になるのでしょうか。」
あなた:「社員と会社との間に契約、勤務規則その他に別段の定めがないのでしたら、著作者は A となります。権利については B ことになります。」
甲氏:「なるほど、分かりました。」
〔解答群〕
B:著作者人格権は社員が有しますが、著作権は使用者である会社が有する
B:著作者人格権は社員が有しますが、著作権は使用者である会社と社員が共有する
B:著作者人格権と著作権の両方を会社が有する
B:著作者人格権は会社が有しますが、著作権は会社と従業者である社員が共有する
出典:中小企業診断協会|2020年度 第1次試験問題|経営法務(PDF)
解答
正解:ウ
A:使用者である会社
B:著作者人格権と著作権の両方を会社が有する
解説
ア:×
職務著作に該当する場合、著作者は使用者(会社)となる。従業者が著作者となるのは、職務著作に該当しない場合。記述は誤り。
イ:×
職務著作では、著作権は会社に帰属し、共有にはならない。記述は誤り。
ウ:〇
職務著作に該当する場合は、著作者は使用者(会社)となり、著作者人格権も会社が有する。正しい記述。
エ:×
著作者人格権は原則として譲渡不可であり、法人が有することは通常認められない。職務著作に該当する場合のみ、会社が著作者人格権を有する。記述は誤り。
学習のポイント
- 職務著作とは、法人等の業務に従事する者が職務上作成した著作物で、法人名義で公表されるもの。
- 職務著作に該当する場合、著作者は使用者(会社)となり、著作権・著作者人格権ともに会社が有する。
- 職務著作に該当しない場合は、著作者は従業者であり、著作権は契約等に基づいて会社に譲渡されることがある。
- 実務では、契約・就業規則・公表形態などが職務著作の成立要件に影響する。