過去問解説(経営法務)_2020年(R2年) 第16問

難易度・正答率・重要度

  • 難易度:★★★★☆(英文契約の構造理解と国際私法の基礎が必要。)
  • 正答率:★★★☆☆(正答率50〜70%。標準的な難易度。)
  • 重要度:★★★★☆(国際取引契約のリスク管理に直結。)

問題文

以下の会話は、株式会社Pの代表取締役甲氏と、中小企業診断士であるあなたとの間で行われたものである。この会話を読んで、下記の設問に答えよ。
なお、空欄Cは、設問ではなく、あえて空欄としているものであり、解答する必要はない。


甲氏:「弊社は、として、a国のQ社との間で売買契約を締結する予定です。Q社から提示された売買契約書案には、以下のような条項があるのですが、変更を申し入れる必要はありませんか。」

In no event shall the liability of the Seller for breach of any contractual provision relating to the Goods exceed the purchase price of the Goods quoted herein. Any action resulting from any breach by the Seller must be commenced by the Buyer within two weeks after the Goods are delivered.

あなた:「この規定は、御社にとって、不利益な条項となっております。例えば、という点があります。」

甲氏:「ありがとうございます。以下の規定は、どのような内容のものですか。
This Agreement shall be governed by and construed in accordance with the .

あなた:「この規定は、に関する規定です。。全体にわたって相談が必要でしたら、弁護士を紹介することは可能です。」

甲氏:「ぜひ、よろしくお願いいたします。」


(設問1)

会話の中の空欄AとBに入る記述の組み合わせとして、最も適切なものはどれか。

A:売主  B:買主の契約違反に対する訴訟提起の期間が短い
A:売主  B:買主の賠償の上限が商品の購入価格とされている
A:買主  B:売主の契約違反に対する訴訟提起の期間が短い
A:買主  B:売主の賠償の上限が現実に生じた損害に限定されている

(設問2)

会話の中の空欄DとEに入る記述の組み合わせとして、最も適切なものはどれか。

D:裁判管轄  E:a国となると多額の費用がかかる可能性があります
D:裁判管轄  E:判決を取得した後の執行可能性の問題があります
D:準拠法   E:裁判管轄が決まれば、必然的に準拠法が決まります
D:準拠法   E:内容を容易に知り理解できる国の法律が望ましいです

出典:中小企業診断協会|2020年度 第1次試験問題|経営法務(PDF)


解答

設問1:ウ
設問2:エ


解説

【設問1】

ア:×
甲氏は「買主」として契約を締結する立場であるため、「売主」とする記述は誤り。

イ:×
契約条項に記載されているのは「売主の賠償責任の上限」であり、買主の賠償ではない。記述は誤り。

ウ:〇
甲氏は買主として契約を締結する予定であり、条項では「売主の契約違反に対する訴訟提起期間が2週間」とされている。これは買主にとって不利な条件である。正しい組み合わせ。

エ:×
条項では「売主の賠償責任の上限が商品の購入価格」とされており、「現実に生じた損害に限定される」とは記載されていない。記述は誤り。

【設問2】

ア:×
空欄Cに記載された条項は「準拠法」に関するものであり、「裁判管轄」ではない。記述は誤り。

イ:×
同上。裁判管轄に関する記述ではないため、空欄Dに「裁判管轄」を入れるのは誤り。

ウ:×
準拠法と裁判管轄は別概念であり、一方が決まれば他方も決まるというものではない。記述は誤り。

エ:〇
準拠法は契約の解釈や適用に影響するため、内容を理解しやすい国の法律を選ぶことが望ましい。正しい組み合わせ。


学習のポイント

  • 国際契約では、準拠法と裁判管轄を明確に定めることがリスク回避に重要。
  • 賠償責任の上限や訴訟提起期間などの条項は、当事者の立場に応じて慎重に検討すべき。
  • 準拠法は契約の解釈・履行に影響を与えるため、自社が理解しやすい法体系を選ぶのが望ましい。
  • 英文契約では、条文の文言が直接的にリスクを生むため、専門家の確認が不可欠。