過去問解説(経営法務)_2020年(R2年) 第17問

難易度・正答率・重要度

  • 難易度:★★★☆☆(条文の趣旨と実務感覚の理解が必要。)
  • 正答率:★★★☆☆(正答率50〜70%。標準的な難易度。)
  • 重要度:★★★☆☆(民法の基本的な土地利用ルールとして重要。)

問題文

民法に定める相隣関係に関する記述として、最も適切なものはどれか。
なお、公法的規制は考慮せず、別段の慣習はないものとする。


導水管を埋め、又は溝を掘るには、境界線からその深さと同一以上の距離を保たなければならない。
分割によって公道に通じない土地が生じたときは、その土地の所有者は、公道に至るために、その土地を囲んでいる全ての土地のうち損害が最も少ない場所を通行しなければならない。
屋根を隣地との境界線を越えて隣地に出す場合は違法であるが、直接に雨水を隣地に注ぐ構造の屋根を設けることは適法である。
隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは、その竹木の所有者に、その枝を切らせることができるにとどまるが、隣地の竹木の根が境界線を越えるときは、自らその根を切ることができる。

出典:中小企業診断協会|2020年度 第1次試験問題|経営法務(PDF)


解答

正解:エ
隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは、その竹木の所有者に、その枝を切らせることができるにとどまるが、隣地の竹木の根が境界線を越えるときは、自らその根を切ることができる。


解説

ア:×
導水管や溝の設置に関して、民法では一定の距離を保つ義務はあるが、「深さと同一以上の距離」という具体的な数値基準は定められていない。記述は誤り。

イ:×
通行権の行使においては、囲まれた土地の所有者は、損害が最も少ない場所を選ぶ義務はあるが、「囲んでいる全ての土地」を通行しなければならないという記述は誤り。

ウ:×
隣地に雨水を直接注ぐ構造の屋根は、隣地の利用を妨げる可能性があるため、適法とは限らない。記述は誤り。

エ:〇
枝と根では扱いが異なる。枝が越境している場合は、原則として所有者に切除を求める必要がある。一方、根が越境している場合は、越境された側が自ら切除することが認められている。正しい記述。


学習のポイント

  • 相隣関係は、隣接する土地所有者間の調整ルールであり、民法で定められている。
  • 枝は「所有者に切除を求める」、根は「自ら切除できる」という区別がある。
  • 通行権や施設設置に関する規定は、損害の最小化や合理性が重視される。
  • 公法的規制(建築基準法など)とは別に、民法上の私法的ルールとして理解する必要がある。