難易度・正答率・重要度
- 難易度:★★★★☆(改正民法の時効制度の理解が必要。)
- 正答率:★★★☆☆(正答率50〜70%。標準的な難易度。)
- 重要度:★★★★☆(債権管理・契約実務に直結する重要論点。)
問題文
時効に関する記述として、最も適切なものはどれか。
なお、「民法の一部を改正する法律」(平成29年法律第44号)により改正された民法が適用されるものとし、附則に定める経過措置及び特約は考慮しないものとする。
ア
飲食店の飲食料に係る債権は、1年間行使しないときは、消滅する。
イ
債権について催告がなされ、その後本来の時効期間が経過し、時効の完成が猶予されている間に、当該債権についての協議を行うことの合意が書面でされても、それに基づく時効の完成猶予の効力は生じない。
ウ
債権は、時効の完成猶予や更新がなければ、債権者が権利を行使することができることを知った時から10年間行使しないときに初めて時効によって消滅する。
エ
天災のため時効の更新をするための手続を行うことができないときには、その障害が消滅した時から2週間を経過して初めて時効は完成する。
出典:中小企業診断協会|2020年度 第1次試験問題|経営法務(PDF)
解答
正解:イ
債権について催告がなされ、その後本来の時効期間が経過し、時効の完成が猶予されている間に、当該債権についての協議を行うことの合意が書面でされても、それに基づく時効の完成猶予の効力は生じない。
解説
ア:×
改正民法では、飲食店の債権に関する短期消滅時効(1年など)は廃止されており、原則として5年または10年の時効が適用される。記述は誤り。
イ:〇
催告による時効完成猶予は、一定期間のみ効力を持つ。猶予期間中に書面で協議の合意があっても、すでに本来の時効期間が経過している場合は、協議による猶予の効力は生じない。正しい記述。
ウ:×
改正民法では、債権の消滅時効は「権利を行使できることを知った時から5年」または「権利を行使できる時から10年」のいずれか早い方で消滅する。記述は誤り。
エ:×
天災などによる障害がある場合、時効の完成は障害が消滅した時から「相当の期間」後に完成するが、「2週間」という具体的な期間は定められていない。記述は誤り。
学習のポイント
- 改正民法では、従来の短期消滅時効(1年など)は原則廃止され、統一的な時効期間が導入された。
- 催告による完成猶予は、一定期間のみ有効であり、猶予中の協議合意が効力を持つには本来の時効期間が残っている必要がある。
- 時効の完成には、権利行使可能性の認識と経過期間の両面から判断される。
- 天災等による障害がある場合の時効完成は、状況に応じた柔軟な判断が求められる。