過去問解説(経営法務)_2020年(R2年) 第20問

難易度・正答率・重要度

  • 難易度:★★★★☆(改正民法の保証制度の理解が必要。)
  • 正答率:★★★☆☆(正答率50〜70%。標準的な難易度。)
  • 重要度:★★★★☆(保証契約の実務対応に直結する重要論点。)

問題文

事業のために負担した貸金等債務を主たる債務とする保証契約に関する記述として、最も適切なものはどれか。
なお、「民法の一部を改正する法律」(平成29年法律第44号)により改正された民法が適用されるものとし、附則に定める経過措置及び特約は考慮しないものとする。


個人事業主の配偶者であって、当該事業に現に従事していない者が、主たる債務者である当該個人事業主の保証人になろうとする場合、保証債務を履行する意思を公正証書により表示する必要がある。
自然人が保証人となる場合、保証契約の締結の日前14日以内に作成された公正証書で保証債務を履行する意思を表示していなければ、その効力を生じない。
主たる債務者が法人である場合のその取締役が保証人になろうとする場合、保証債務を履行する意思を公正証書により表示する必要がある。
法人が保証人となる場合には、保証契約は書面で行う必要はない。

出典:中小企業診断協会|2020年度 第1次試験問題|経営法務(PDF)


解答

正解:ア
個人事業主の配偶者であって、当該事業に現に従事していない者が、主たる債務者である当該個人事業主の保証人になろうとする場合、保証債務を履行する意思を公正証書により表示する必要がある。


解説

ア:〇
改正民法では、事業用貸金等債務の保証契約において、事業に従事していない個人が保証人となる場合、保証意思を公正証書で表示することが義務付けられている。正しい記述。

イ:×
保証意思の表示は「保証契約の締結時点」で公正証書により行う必要があるが、「14日以内に作成された公正証書」という要件は存在しない。記述は誤り。

ウ:×
法人の取締役が保証人になる場合は、事業に従事しているとみなされるため、公正証書による保証意思表示は不要。記述は誤り。

エ:×
法人が保証人となる場合でも、保証契約は書面で行う必要がある。口頭契約では効力を生じない。記述は誤り。


学習のポイント

  • 改正民法では、事業用貸金等債務の保証契約において、個人保証人の保護が強化された。
  • 保証人が事業に従事していない場合、公正証書による保証意思表示が必要。
  • 事業従事者(取締役など)はこの要件の対象外。
  • 保証契約は、法人・個人を問わず、書面で締結する必要がある。
  • 実務では、保証人の属性と事業関与の有無を確認することが重要。