難易度・正答率・重要度
- 難易度:★★★★☆(改正民法の定型約款制度の理解が必要。)
- 正答率:★★★☆☆(正答率50〜70%。標準的な難易度。)
- 重要度:★★★★☆(BtoCサービス設計に直結する重要論点。)
問題文
以下の会話は、株式会社Zの代表取締役甲氏と、中小企業診断士であるあなたとの間で行われたものである。この会話を読んで、下記の設問に答えよ。
なお、「民法の一部を改正する法律」(平成29年法律第44号)により改正された民法が適用されるものとし、附則に定める経過措置は考慮しないものとする。
甲氏:「インターネットを使ったBtoCの新しいサービスを始める予定です。そのサービスを利用してもらうに当たっては、ルールを作って、そのサービスの利用者に守ってもらいたいと考えているのですが、どのようにすればよろしいでしょうか。」
あなた:「そのルールは、定型約款に該当し得ることになります。定型約款を御社とサービス利用者との間の合意内容とするためには、サービス利用者の利益を一方的に害するような内容でないこと等を前提として、その定型取引を行うことを合意した上で、御社がA。」
甲氏:「ありがとうございます。他に対応しなければならないことはありますか。」
あなた:「一時的な通信障害が発生した場合等を除き、B。」
甲氏:「分かりました。途中でその定型約款の内容を変更しようと思ったときには、変更は可能なのでしょうか。」
あなた:「C。その定型約款は慎重に作成する必要がありますので、私の知り合いの弁護士を紹介しますよ。」
甲氏:「よろしくお願いいたします。」
(設問1)
会話の中の空欄AとBに入る記述の組み合わせとして、最も適切なものはどれか。
B:定型取引を行うことの合意前においてサービス利用者から請求があった場合にその定型約款の内容を示さないと、定型約款は契約内容となりません
B:定型取引を行うことの合意前においてサービス利用者から請求があった場合にその定型約款の内容を示さないと、定型約款は契約内容となりません。これは、合意後に請求があった場合も同様です
B:定型取引を行うことの合意前においてサービス利用者から請求があった場合にその定型約款の内容を示さないと、定型約款は契約内容となりません
B:定型取引を行うことの合意前においてサービス利用者から請求があった場合にその定型約款の内容を示さないと、定型約款は契約内容となりません。これは、合意後に請求があった場合も同様です
(設問2)
会話の中の空欄Cに入る記述として、最も不適切なものはどれか。
出典:中小企業診断協会|2020年度 第1次試験問題|経営法務(PDF)
解答
設問1:ア
設問2:ア
解説
【設問1】
ア:〇
定型約款を契約内容とするには、事業者があらかじめその旨を表示していれば足りる。
また、定型取引の合意前に利用者から請求があった場合は、約款内容を示さないと契約内容にならない。正しい組み合わせ。
イ:×
合意後に請求があった場合は、約款内容を示す義務はない。記述は誤り。
ウ・エ:×
定型約款は個別合意がなくても契約内容となる制度であり、「個別の合意をするしかない」という記述は誤り。
【設問2】
ア:×(不適切)
定型約款の変更要件は、民法で厳格に定められており、特約によって自由に変更できるわけではない。利用者保護の観点から、変更には周知や合理性が求められる。記述は不適切。
イ:〇
効力発生前に周知しないと、変更の効力が生じないことがある。正しい記述。
ウ:〇
変更時には、効力発生時期・変更内容・変更の旨を周知する必要がある。正しい記述。
エ:〇
変更が利用者の一般の利益に適合する場合は、個別合意なしでも契約内容を変更できる。正しい記述。
学習のポイント
- 定型約款は、事業者が一方的に定める契約条件であり、表示と周知が重要。
- 利用者から請求があった場合は、契約前に約款内容を示す義務がある。
- 約款変更には、効力発生時期の設定と周知が必要。
- 特約によって民法の変更要件を無効化することはできない。
- 利用者の利益に適合する変更は、個別合意なしでも可能。