過去問解説(企業経営理論)_2020年(令和2年) 第3問

難易度・正答率・重要度

  • 難易度: ★★☆☆☆(ファイブフォースの基礎)
  • 正答率: ★★★★☆(正答率70%前後)
  • 重要度: ★★★☆☆(買い手・売り手の交渉力)

第3問

「業界の構造分析」の枠組みに基づいて考えられる、売り手(サプライヤー)と買い手(顧客)との間での交渉力に関する記述として、最も適切なものはどれか。


新たな企業が売り手として参入できる場合には、新規参入が不可能な場合と比べて、売り手に対する買い手の交渉力は低下する。
ある売り手が供給する製品と他社の競合製品との間での互換性が高い場合には、互換性が低い場合と比べて、売り手に対する買い手の交渉力は低下する。
ある売り手が供給する製品を買い手が他社の競合製品に切り換える際に、買い手がその製品の使用方法を初めから学び直す必要がある場合には、その必要がない場合と比べて、買い手に対する売り手の交渉力は低下する。
売り手が前方統合できる場合には、前方統合が不可能な場合と比べて、売り手に対する買い手の交渉力は低下する。
売り手側のハーフィンダール指数がゼロに近づくほど、買い手に対する売り手の交渉力は高くなる。

出典: 中小企業診断協会|2020年度 第1次試験問題|企業経営理論(PDF)


解答

正解:エ


解説

ア:×
 売り手の参入が容易になるほど供給側が分散しやすく、買い手の選択肢が増えるため、一般に買い手の交渉力は「上昇」する。低下するとするのは逆。

イ:×
 互換性が高いほど代替が容易になり、買い手のスイッチングコストが下がるため、買い手の交渉力は「上昇」する。低下ではない。

ウ:×
 使用方法の学び直しはスイッチングコストを高めるため、売り手の交渉力は「上昇」する。低下とするのは誤り。

エ:〇
 売り手が前方統合(直販や自社小売展開など)の脅威を示せる場合、買い手は交渉で不利になり交渉力は「低下」する。

オ:×
 ハーフィンダール指数がゼロに近いほど売り手側は極端に分散しており、売り手の交渉力は「低下」する。高くなるとは言えない。


学習のポイント

  • 買い手の交渉力が高まる条件:
    ・売り手が分散(参入容易、低集中)
    ・製品の互換性・代替可能性が高い
    ・スイッチングコストが低い
  • 売り手の交渉力が高まる条件:
    ・前方統合の脅威(直販・自社小売)
    ・差別化や非互換性で代替が困難
    ・スイッチングコストが高い
  • 補足(集中度と交渉力の関係):
    ・ハーフィンダール指数が高い=集中度高=売り手交渉力が強まりやすい
    ・ハーフィンダール指数が低い=分散=買い手交渉力が強まりやすい
  • 試験対策のコツ:
    「互換性↑・スイッチングコスト↓=買い手↑」「前方統合の脅威=買い手↓」という因果を図式で覚えると取りこぼしにくい。