過去問解説(企業経営理論)_2020年(令和2年) 第4問

難易度・正答率・重要度

  • 難易度: ★★☆☆☆(競争優位の基礎)
  • 正答率: ★★★★☆(正答率70%前後)
  • 重要度: ★★★☆☆(コスト・リーダーシップと差別化)

第4問

企業の競争優位に関する記述として、最も適切なものはどれか。


PIMS(Profit Impact of Market Strategy)プログラムでは、市場シェアの追求と知覚される相対的な品質の追求は両立できないことが、明らかにされている。
経験効果における習熟度は業界の特性に関わらず一定であるために、累積生産量の増加に伴う単位当たり費用の変化は、いかなる業界においても同様の習熟度を係数とする式で示される。
経験効果を利用したコスト・リーダーシップを追求する場合には、競合企業よりも多くの累積生産量を達成するために、できるだけ早い時点で参入することが有効な方策となる。
製品差別化が有効である場合には、価格が上昇しても、競合する製品への乗り換えが生じにくいことから、需要の交差弾力性は高い。
範囲の経済は、多角化を進める要因であることから、特定の事業においてコスト・リーダーシップを追求する上では、影響をもたらさない。

出典: 中小企業診断協会|2020年度 第1次試験問題|企業経営理論(PDF)


解答

正解:ウ


解説

ア:×
 PIMSの知見では、市場シェアの高さも相対的品質の高さも収益性に正の影響を与えうるため、両者は両立し得る。両立不可とするのは誤り。

イ:×
 経験効果(学習曲線)の習熟度は業界・技術・プロセスにより異なる。一定の係数で一様に示されるわけではない。

ウ:〇
 経験効果を活用したコスト・リーダーシップでは、累積生産量を先行して積み上げる早期参入が有効。スケールと学習の優位がコスト差に直結する。

エ:×
 差別化が有効なときは代替が起こりにくく、交差弾力性は「低い」。高いとするのは逆。

オ:×
 範囲の経済は資源・ケイパビリティの共用でコスト低下をもたらし、特定事業のコスト・リーダーシップにも影響し得る。影響なしは誤り。


学習のポイント

  • 経験効果の活用
    ・累積生産量の増加で単位費用が低下する。
    ・早期参入とボリューム確保がコスト優位の鍵。
  • 差別化と交差弾力性
    ・差別化が強いほど代替が起こりにくく、交差弾力性は低下。
  • PIMSの示唆
    ・高シェアと高品質はともに収益性向上要因で、両立可能。
  • 範囲の経済(Economies of scope)
    ・事業間での設備・ブランド・チャネル共有によりコスト低下。
    ・個別事業のコスト・リーダーシップにも寄与する。
  • 試験対策のコツ
    「経験効果=早期参入×累積量」「差別化=交差弾力性↓」「範囲の経済=共有でコスト↓」の因果で整理する。