過去問解説(企業経営理論)_2020年(令和2年) 第5問

難易度・正答率・重要度

  • 難易度: ★★☆☆☆(多角化・M&Aの基本)
  • 正答率: ★★★★☆(正答率70%前後)
  • 重要度: ★★★☆☆(統合・シナジーの理解)

第5問

多角化と M&A に関する記述として、最も不適切なものはどれか。


異業種、同業種を問わず、M&A の統合段階における機能統合では、準備段階でのデューデリジェンス(due diligence)による、研究開発、生産、販売などの重複部分や補完関係の明確化が重要である。
異業種の M&A のメリットは、基本的には、範囲の経済とリスクの分散の実現であるが、自社の必要としない資源までも獲得してしまうリスクもある。
多角化では、企業の主要な市場での需要の低下という脅威は、外的な成長誘引(external inducement)となる。
多角化には、特定の事業の組み合わせで追加的に発生する相乗効果と、複数の製品市場分野での事業が互いに足りない部分を補い合う相補効果がある。
同業種の M&A のメリットは、基本的には、規模の経済と経験効果の実現であるが、同業種間であるため各々の組織文化の調整と統合にはコストがかからない。

出典:中小企業診断協会|2020年度 第1次試験問題|企業経営理論(PDF)


解答

正解:オ


解説

ア:〇
 統合段階の機能統合の質は、事前のデューデリジェンスで重複・補完関係を正確に把握しているかに大きく依存する。妥当な記述。

イ:〇
 異業種 M&A は範囲の経済やリスク分散の狙いが中心だが、非中核資源の抱え込みリスク(複雑性増大・統合コスト増)も伴う。

ウ:〇
 主力市場の需要低下や成熟は、外的な成長誘因として多角化を後押しする典型要因である。

エ:〇
 多角化シナジーは、相乗効果(追加価値の創出)と相補効果(不足の補完)の二層で整理できる。

オ:×
 同業種 M&A でも組織文化や業務慣行の差は統合コストを生む。文化統合は不可避で、コストがかからないとするのは不適切。


学習のポイント

  • M&A統合の鍵:
  • デューデリジェンスで重複・補完を特定し、統合計画に落とし込む。
  • 統合コストとシナジーのタイミングを管理する。
  • 異業種M&Aのメリットとリスク:
  • メリット:範囲の経済、リスク分散。
  • リスク:非中核資源の過剰取得、複雑性増加。
  • 多角化の誘因:
  • 外的誘因(市場成熟・需要低下・技術変化)で新領域探索が促される。
  • シナジーの2類型:
  • 相乗効果:組み合わせで追加価値。
  • 相補効果:不足の補完で全体最適。
  • 試験対策のコツ:
  • 「同業でも文化統合はコスト↑」「異業の範囲の経済=共有で費用↓」を軸に判断する。