過去問解説(企業経営理論)_2020年(令和2年) 第9問

難易度・正答率・重要度

  • 難易度: ★★☆☆☆(起業家モデルの基本理解)
  • 正答率: ★★★★☆(正答率70%前後)
  • 重要度: ★★★☆☆(ベンチャー経営の要諦)

第9問

米国において起業家教育、起業家研究のパイオニアと称されるJ.A.ティモンズは、数多くのベンチャー企業の成功事例や失敗事例の調査から、事業機会、経営資源、経営者チーム、それらをコントロールする起業家からなる、ベンチャー企業が成功するためのモデルを構築した。
このモデルに関する記述として、最も適切なものはどれか。


事業機会、経営資源、経営者チームが常に適合していることが重要であり、不均衡が一時的にでも生じないように3つの要素を管理する能力が起業家に求められている。
事業機会、経営資源、経営者チームの3つの要素が均衡することはまれであり、ベンチャー企業の経営は不安定であることを前提としているので、起業家の役割は不安定な状態にある3つの要素のバランスを取ることである。
事業機会、経営資源、経営者チームの3つの要素の中で、ベンチャー企業は優れた経営者チームによって始められることを前提としているので、経営者チームが他の要素と比べて弱くなる状態は想定していない。
事業機会、経営資源、経営者チームの3つの要素の中で最も重要なものは事業機会の発見であり、事業機会を実現するために必要な経営資源不足への対応は、起業家の役割ではない。

出典: 中小企業診断協会|2020年度 第1次試験問題|企業経営理論(PDF)


解答

正解:イ


解説

ア:×
 ティモンズモデルは、三要素(事業機会・経営資源・経営者チーム)が常に完全に適合することを前提としていない。不均衡が生じるのは自然であり、起業家はその調整役を担う。

イ:〇
 三要素が均衡することはまれであり、ベンチャー経営は不安定を前提とする。起業家の役割は、この不安定な三要素のバランスを取り続けることにある。

ウ:×
 経営者チームが弱い場合も想定される。ティモンズモデルは、必ずしも優れたチームから始まることを前提としていない。

エ:×
 事業機会の発見は重要だが、それを実現するための資源不足への対応も起業家の重要な役割である。資源調達やネットワーク形成は不可欠。


学習のポイント

  • ティモンズモデルの三要素
    ・事業機会(市場の魅力・タイミング)
    ・経営資源(資金・人材・ネットワーク)
    ・経営者チーム(補完的スキル・結束)
  • 起業家の役割
    ・三要素の不均衡を前提に、バランスを調整する。
    ・不足資源を獲得し、チームを強化して機会を実現する。
  • 実務での示唆
    ・完璧な適合を待たずに、機会に資源とチームを合わせ込む。
    ・段階的に不均衡を縮小しながら成長を図る。
  • 試験対策のコツ
    「常時適合は×」「不均衡を調整するのが起業家の役割」という点を押さえる。