過去問解説(企業経営理論)_2020年(令和2年) 第10問

難易度・正答率・重要度

  • 難易度: ★★☆☆☆(組織行動の用語整理)
  • 正答率: ★★★★☆(正答率70%前後)
  • 重要度: ★★★☆☆(文化・意思決定の落とし穴)

問題文

次の文章を読んで、問題に答えよ。
老舗と呼ばれる中小企業Z社は、重代で受け継ぐ製法による生産品を中心に事業を営むファミリービジネスである。創業以来の価値観や行動規範を重視して独自の組織文化を形成し、50%を超える株式を保有する創業家出身の四代目社長と、創業者一族が中心となって従業員との一体感を重視している。二代目社長の代からは、新しい品目や製造プロセスの改良に関して外部から技術を導入してきた。
①歴史的経緯で外部から導入した製造プロセスの改良技術に基づき、技術関係部門同士の連携による問題解決は定型化されて続いている。
創業以来、危機的状況を何度も乗り切ってきたが、近年、過去にZ社を危機から救った伝統的な事業戦略が機能しなくなった。②創業以来の企業の価値観は、現在も社員の間で共有されているが、伝統的な価値観に基づく戦略による過去の成功が現在の戦略を機能させていない根本的原因となっていることを誰も認めようとはしない。
経営の意思決定は、創業家出身の社長を中心として行われてきた。最近、③役員や生え抜きの部門長と違和感なく全員一致で戦略的に意思決定したが、建設的なアイデアや現実的な解決策は顧みられなかった。
Z社に関する下線部①~③の記述と、それらを説明する以下のa~cの語句の組み合わせとして、最も適切なものを下記の解答群から選べ。
a 経路依存性/b グループ・シンク/c 組織文化の逆機能


〔解答群〕

①-a  ②-b  ③-c
①-a  ②-c  ③-b
①-b  ②-a  ③-c
①-b  ②-c  ③-a
①-c  ②-a  ③-b

出典:中小企業診断協会|2020年度 第1次試験問題|企業経営理論(PDF)


解答

正解:イ
①-a(経路依存性)/②-c(組織文化の逆機能)/③-b(グループ・シンク)


解説

ア:×
 ②をグループ・シンク、③を組織文化の逆機能とするのは逆。②は価値観が変化適応を阻む「逆機能」、③は全会一致で対立や批判が抑制される「グループ・シンク」。

イ:〇
 ①は過去の選択・導入技術に縛られる「経路依存性」、②は共有価値観が戦略刷新を阻む「組織文化の逆機能」、③は合意志向で建設的な異論が退けられる「グループ・シンク」。

ウ:×
 ①をグループ・シンク、②を経路依存性とするのは誤り。①は技術・プロセスの定型化継続が示す経路依存。

エ:×
 ①をグループ・シンク、③を経路依存性とするのは不適切。③の全員一致・発想抑制はグループ・シンクに合致。

オ:×
 ①を組織文化の逆機能、②を経路依存性とするのは取り違え。②の「伝統的価値観が原因」を示すのが逆機能。


学習のポイント

  • 経路依存性:
    ・過去の選択・導入技術が将来の選択肢を制約し、定型化を強める。
    ・成功体験が更新を妨げ、硬直につながりやすい。
  • 組織文化の逆機能:
    ・共有価値観が環境変化への適応を阻害。
    ・過去の成功パターンへの固執が戦略刷新を妨げる。
  • グループ・シンク:
    ・一致・調和を重視し過ぎて、異論や批判が抑制される。
    ・創造的代替案の検討不足や意思決定の質低下を招く。
  • 試験対策のコツ:
    ・①技術・プロセスの固定化=経路依存性/②価値観が原因=逆機能/③全会一致で異論抑制=グループ・シンク、と紐づけて覚える。