過去問解説(企業経営理論)_2020年(令和2年) 第33問

難易度・正答率・重要度

  • 難易度: ★★☆☆☆(社会的アイデンティティと参照集団)
  • 正答率: ★★★★☆(正答率70%前後)
  • 重要度: ★★★☆☆(消費者行動の基礎理論)

問題文

消費者と社会的アイデンティティに関する記述として、最も適切なものはどれか。


感覚や好みに基づいて選択される場合と異なり、専門的知識が必要な製品やサービスに関しては、消費者は属性や価値観が自分と類似している他者の意見やアドバイスを重視する。
自己アイデンティティを示すため、消費者は拒否集団をイメージさせるブランドの選択を避ける傾向がある。この傾向は、他者から見られている状況において行う選択よりも、見られていない状況において行う選択で顕著に強くなる。
自己概念において社会的アイデンティティが顕著になっている場合、自分が所属している内集団で共有される典型的な特徴を支持するようになる一方、自分が所属していない外集団すべてに対して無関心になる。
自分に影響を与えようとする意図をもった他者が存在する場合、消費者の行動はその他者から強く影響を受ける一方で、単にその場にいるだけの他者からは、影響を受けることはない。
自分に対する他者からの否定的な評価を避け、肯定的な評価を形成していこうとする欲求は自己高揚と呼ばれる。自己高揚のレベルが高い消費者は、自分の所属集団よりも、願望集団で使用されているブランドとの結びつきを強める傾向がある。

出典:中小企業診断協会|2020年度 第1次試験問題|企業経営理論(PDF)


解答

正解:オ


解説

ア:×
 専門的知識が必要な領域では、類似他者よりも専門家・オピニオンリーダーの推奨が重視されやすい。

イ:×
 拒否集団の回避は「見られている状況(公的消費)」で強まりやすく、非公開状況で特に強くなるという記述は不適切。

ウ:×
 社会的アイデンティティが顕著なとき、外集団への無関心ではなく、差別化や規範維持のための意識・態度の偏りが生じやすい。

エ:×
 単なる同席でも同調・社会的促進・抑制などの影響が起こり得るため、「影響はない」は誤り。

オ:〇
 自己高揚欲求が高い消費者は、理想や憧れの「願望集団」との同一化を志向し、そのブランドとの結びつきを強める傾向がある。


学習のポイント

  • 参照集団の種類:
    ・内集団/外集団、同化対象の「願望集団」、回避対象の「拒否集団」。
    ・公的消費では同調圧力や印象管理が強まり、ブランド選択に参照集団の影響が出やすい。
  • 自己高揚とブランド選択:
    自己高揚が強いと、理想自己に近づくために願望集団の象徴(ブランド・スタイル)を選びやすい。
  • 専門製品の意思決定:
    高関与・専門性の高い領域では、専門家レビューや信頼できる情報源(権威・実証)に依拠しやすい。
  • 試験対策のコツ:
    「どの状況で参照集団の影響が強まるか(公的/私的)」と「どのタイプの参照集団に同一化・回避が起きるか(願望/拒否)」を軸で整理する。