難易度・正答率・重要度
- 難易度: ★★★☆☆(ブランド戦略とブランド・エクイティ)
- 正答率: ★★★☆☆(正答率60%前後)
- 重要度: ★★★☆☆(戦略枠組みと知覚価値の理解)
問題文
次の文章を読んで、下記の設問に答えよ。
企業は、ブランド・エクイティを創出し、維持し、強化するために、①自社ブランドの市場状況と製品状況を考慮しながらブランド戦略を展開している。その成果を示す1つの指標が、毎年、ブランド価値評価の専門会社から発表される企業ブランド価値ランキングであり、それはランキングが上位であるほど②強いブランドであることを示している。
(設問1)
文中の下線部①に関して、以下の表は、自社ブランドの市場状況と製品状況によって、当該ブランドが採るべき戦略を検討する際の戦略枠組みである。自社の既存ブランドが、既存市場において、新たなブランド名を付すことによって再出発を図るというCに該当する戦略として、最も適切なものを下記の解答群から選べ。
ここでいう市場とは、ニーズや用途を意味する。
市場 | 既存ブランド | 新規ブランド |
---|---|---|
既存市場 | A | C |
新規市場 | B | D |
〔解答群〕
ア | ブランド・リポジショニング |
イ | ブランド開発 |
ウ | ブランド強化 |
エ | ブランド変更 |
(設問2)
文中の下線部②に関する記述として、最も適切なものはどれか。
出典:中小企業診断協会|2020年度 第1次試験問題|企業経営理論(PDF)
解答
- 設問1:エ
- 設問2:エ
解説
(設問1)
ア:×
ブランド・リポジショニングは既存ブランドの位置づけ変更であり、既存市場×既存ブランド(A)に近い発想。C(既存市場×新規ブランド)ではない。
イ:×
ブランド開発は新規市場や新製品への展開文脈で語られることが多く、ここで問う「既存市場で新規ブランド名を付す」戦略とは一致しない。
ウ:×
ブランド強化は既存ブランドのエクイティを高める施策で、名称を変えて再出発するCの戦略意図と異なる。
エ:〇
既存市場に対して新たなブランド名を付して再出発するのは「ブランド変更(リネーミング含む)」に相当し、Cに適切。
(設問2)
ア:×
国内ランキングの上位は必ずしもIT企業ブランドが占めるとは限らず、産業構造や評価指標の違いがあるため断定は不適切。
イ:×
想起集合は少数に絞られる傾向があり、ブランド数の増加は逆に強いブランドの維持を難しくすることが多い。
ウ:×
成分ブランディングは1つに限定されない。複数の成分ブランドの併用もあり、強いブランドほど組み合わせの設計が重要。
エ:〇
強いブランドは知覚価値を高め、価格プレミアムや選好の増大をもたらす。ブランドは差別化の原動力として機能する。
オ:×
ブランド連想は量より質と一貫性が重要で、単に数が多いほどエクイティが高まるとはいえない。
学習のポイント
- 戦略枠組みの読み方:
既存市場×新規ブランド(C)は、同じニーズ・用途の市場に対して名称変更や新ブランド投入で再活性化を狙う文脈。 - ブランド変更の狙い:
既存ブランドの固定化した認識をリセットし、新しいポジショニングで認知・選好を取り直す。 - ブランド・エクイティの効用:
知覚価値の向上が価格プレミアムや選好、再購入、紹介などの行動に波及する。差別化の核として機能する。 - 成分ブランディングの設計:
単独・複数のいずれもあり得る。自社ブランドとの相乗効果と一貫性が鍵で、ただ増やすだけでは逆効果になることもある。 - 試験対策のコツ:
フレーム(A/B/C/D)の軸を即座に言語化できるようにし、「名称変更=C」「エクイティ=知覚の変化→価格・数量効果」を紐づけて覚える。