過去問解説(企業経営理論)_2020年(令和2年) 第35問

難易度・正答率・重要度

  • 難易度: ★★☆☆☆(概念整理)
  • 正答率: ★★★★☆(正答率70%前後)
  • 重要度: ★★★☆☆(社会的価値とマーケ戦略)

問題文

ソサイエタル・マーケティングに関する記述として、最も適切なものはどれか。


「啓発された自己利益(enlightened self-interest)」の考え方のもとで行われる社会貢献活動であるため、長期的あるいは間接的にも企業やブランドのイメージ、ブランド・ロイヤルティといったマーケティング成果への効果は期待されていない。
消費者の長期的な利益あるいは社会的利益に配慮してマーケティングを行うということだけでなく、それを企業の長期的な経営計画と統合することを目指すマーケティングはサステイナブル・マーケティングと呼ばれるが、これとソサイエタル・マーケティングは同義で使われている。
製品の売上の一定額を社会的課題の解決のために寄付する行為はコーズリレーテッド・マーケティングとも呼ばれ、実務において社会的価値と密接に結びつけられたソサイエタル・マーケティングの一部である。
病院、大学、協会、NGOなどの非営利組織で培われた考え方を営利組織にも適用したマーケティングである。

出典: 中小企業診断協会|2020年度 第1次試験問題|企業経営理論(PDF)


解答

正解:ウ


解説

ア:×
ソサイエタル・マーケティングは社会的価値と企業価値の両立を志向し、長期的にブランドイメージやロイヤルティへ好影響を及ぼし得る。

イ:×
サステイナブル・マーケティングは持続可能性を中核にした広い枠組みで、ソサイエタル・マーケティングと重なる部分はあるが同義ではない。

ウ:〇
コーズリレーテッド・マーケティング(CRM)は、寄付などを通じて社会課題の解決と販売促進を結びつける実務的アプローチで、ソサイエタル・マーケティングの一部として位置づけられる。

エ:×
非営利の手法を営利に応用するのは「ソーシャル・マーケティング」の定義に近い。ソサイエタル・マーケティングは企業のマーケティングに社会的利益への配慮を統合する考え方。


学習のポイント

  • 用語の棲み分け:
    ・ソサイエタル・マーケティング=企業のマーケ戦略に社会的利益配慮を統合。
    ・サステイナブル・マーケティング=環境・社会・経済の持続可能性を重視。
    ・ソーシャル・マーケティング=社会行動の変容を目的(主に非営利起点)。
    ・CRM(コーズリレーテッド)=寄付連動で社会価値と販売を接続。
  • 効果の方向性:
    社会的価値へのコミットは、長期的なブランド資産(好意、信頼、ロイヤルティ)形成に寄与し、差別化の源泉となる。
  • 試験対策のコツ:
    「誰が目的主体か(企業利益/社会行動変容)」「時間軸(短期販促/長期資産)」「手段(寄付連動・環境配慮・啓発)」で整理して見分ける。