過去問解説(経営法務)_2021年(R3年) 第13問

難易度・正答率・重要度

  • 難易度:★★★☆☆(複数知識の統合や、誤答肢の吟味が必要。)
  • 正答率:★★★☆☆(正答率50〜70%。標準的な難易度。)
  • 重要度:★★★★☆(商標の先使用権は実務でも重要。)

問題文

次の文章を読んで、問題に答えよ。

株式会社甲(以下「甲社」という。)は、商標「〇〇〇」を付した洋菓子Aを製造販売している。

ところが、甲社は昨日、株式会社乙(以下「乙社」という。)から、次の趣旨の警告書を受け取った。


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貴社の製造販売する洋菓子Aの商標「〇〇〇」は、弊社が指定商品「洋菓子」について商標登録を受けた商標と類似である。直ちに商標「〇〇〇」を付した洋菓子の製造販売を中止するように。
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この警告書を受けて甲社から、中小企業診断士のあなたは相談を受けた。あなたは、甲社が商標「〇〇〇」について先使用権を主張できる可能性があると考え、この旨を甲社に告げた。

先使用権に関する以下のあなたの説明の空欄に入る記述として、最も適切なものを下記の解答群から選べ。


あなた:日本国内において不正競争の目的でなく、____、御社は継続して洋菓子Aについて御社商標「〇〇〇」の使用をする権利を有します。この権利は先使用権と呼ばれ、商標法に規定されています。


〔解答群〕

乙社の商標登録出願後であってもその商標が登録される前から、御社が洋菓子Aについて御社商標「〇〇〇」を使用していた結果、乙社の商標登録の際、現に御社商標「〇〇〇」が御社の業務に係る洋菓子Aを表示するものとして、需要者の間に広く認識されているときは
乙社の商標登録出願後であってもその商標が登録される前から、御社が洋菓子Aについて御社商標「〇〇〇」を使用してさえいれば、乙社の商標登録の際、現に御社商標「〇〇〇」が御社の業務に係る洋菓子Aを表示するものとして、需要者の間に広く認識されていないときでも
乙社の商標登録出願前から、御社が洋菓子Aについて御社商標「〇〇〇」を使用していた結果、乙社の商標登録出願の際、現に御社商標「〇〇〇」が御社の業務に係る洋菓子Aを表示するものとして、需要者の間に広く認識されているときは
乙社の商標登録出願前から、御社が洋菓子Aについて御社商標「〇〇〇」を使用してさえいれば、乙社の商標登録出願の際、現に御社商標「〇〇〇」が御社の業務に係る洋菓子Aを表示するものとして、需要者の間に広く認識されていないときでも

出典:中小企業診断協会|2021年度 第1次試験問題|経営法務(PDF)


解答

正解:ウ
乙社の商標登録出願前から使用しており、かつ需要者に広く認識されている場合、先使用権が認められる。


解説

ア:×
出願後の使用開始では先使用権は認められない。先使用権は、登録出願前からの使用が前提。記述は誤り。

イ:×
需要者の間に広く認識されていない場合は、先使用権は認められない。単に使用していたというだけでは不十分。記述は誤り。

ウ:〇
商標登録出願前から使用しており、かつその商標が需要者の間に広く認識されている場合、先使用権が認められる。これは、既存の使用者の利益を保護する制度趣旨に合致する。正しい記述。

エ:×
需要者に広く認識されていない場合は、先使用権は認められない。記述は誤り。


学習のポイント

  • 先使用権は、商標登録出願前からの使用と、需要者への広い認識が両方必要。
  • 登録商標と類似していても、先使用権が認められれば使用継続が可能。
  • 商標の使用実績と認知度は、商標権との関係で重要な防御要素となる。