難易度・正答率・重要度
- 難易度:★★★☆☆(複数知識の統合や、誤答肢の吟味が必要。)
- 正答率:★★★☆☆(正答率50〜70%。標準的な難易度。)
- 重要度:★★★★☆(国際出願制度は制度理解に直結。)
問題文
特許協力条約(PCT)に基づく国際出願制度に関する以下の文章において、空欄AとBに入る記述の組み合わせとして、最も適切なものを下記の解答群から選べ。
先願主義の下、出願人は一日も早い出願日を確保することを望むため、PCTによる国際出願は有用な制度である。国際的に統一された出願書類を加盟国である自国の特許庁に提出することにより、その国際出願はすべての加盟国において国内出願したのと同様の効果が得られる。例えば、日本の特許庁に対しては日本語又は英語で作成した国際出願願書を1通提出すればよい。
国際出願がされた国内官庁を受理官庁という。受理官庁は一定の要件が受理の時に満たされていることを確認することを条件として、国際出願の受理の日を国際出願日として認める。
各国際出願は国際調査の対象となり、出願人の請求により国際予備審査も行われる。出願人はこれらの結果を利用して、自身の発明の特許性を判断できる。国際出願人は、各国で審査を受けるに際し、A。
各国の特許庁は、B。
〔解答群〕
ア
A:所定の翻訳文を提出する等の「国内移行手続」を行う必要がある
B:それぞれの特許法に基づいて特許権を付与するか否かを判断する
B:それぞれの特許法に基づいて特許権を付与するか否かを判断する
イ
A:所定の翻訳文を提出する等の「国内移行手続」を行う必要がある
B:それぞれの特許法に基づいて特許権を付与するか否かを判断することはできず、国際調査の結果と同じ判断を下す必要がある
B:それぞれの特許法に基づいて特許権を付与するか否かを判断することはできず、国際調査の結果と同じ判断を下す必要がある
ウ
A:何ら手続きを行う必要はない。国際出願された書類がそのまま受理官庁から各国に送付され、審査が開始されるからである
B:それぞれの特許法に基づいて特許権を付与するか否かを判断する
B:それぞれの特許法に基づいて特許権を付与するか否かを判断する
エ
A:何ら手続きを行う必要はない。国際出願された書類がそのまま受理官庁から各国に送付され、審査が開始されるからである
B:それぞれの特許法に基づいて特許権を付与するか否かを判断することはできず、国際調査の結果と同じ判断を下す必要がある
B:それぞれの特許法に基づいて特許権を付与するか否かを判断することはできず、国際調査の結果と同じ判断を下す必要がある
出典:中小企業診断協会|2021年度 第1次試験問題|経営法務(PDF)
解答
正解:ア
A:所定の翻訳文を提出する等の「国内移行手続」を行う必要がある
B:それぞれの特許法に基づいて特許権を付与するか否かを判断する
解説
・Aについて
PCTによる国際出願は、出願人が各国で審査を受ける前に「国内移行手続」を行う必要がある。これは、所定の翻訳文の提出や手数料の納付などを含む。これを行わなければ、各国での審査は開始されない。
・Bについて
PCTは出願手続を統一する制度であり、特許権の付与は各国の特許庁がそれぞれの国内法に基づいて判断する。国際調査や予備審査の結果は参考資料であり、拘束力はない。
他の選択肢は、AまたはBのいずれかに制度的誤りが含まれている。
学習のポイント
- PCT出願は、出願日を早期に確保しつつ、複数国への出願を効率化する制度。
- 国際出願後、各国で審査を受けるには「国内移行手続」が必要。
- 特許の付与は各国の特許庁が独自に判断するため、国際調査結果に拘束されない。
- 国際調査・予備審査は、発明の特許性を事前に把握するための重要な資料。