難易度・正答率・重要度
難易度:★★★★☆(応用的な推論や制度比較が必要。)
正答率:★★★☆☆(正答率50〜70%。標準的な難易度。)
重要度:★★★★☆(頻出論点。制度理解に直結。)
問題文
以下の会話は、X株式会社の代表取締役甲氏と、中小企業診断士であるあなたとの間で行われたものである。この会話を読んで、下記の設問に答えよ。なお、空欄Aは、設問ではなく、あえて空欄としているものであり、解答する必要はない。
甲氏:「弊社は、初めて取引をする外国のY社に製品を輸出しようと考えており、Y社から契約書案が送付されてきたのですが、以下の条項は、どのような内容でしょうか。
PAYMENT
Y shall pay the Price to X by way of A to the bank account designated by X within thirty days after the delivery of the Products to Y under this Agreement.」
あなた:「この条項は、代金の支払方法につき、Bの方法によることとされており、一般的にCという問題点があります。別の方法として、売主のリスクを削減するために、信用状が用いられることがあります。」
甲氏:「信用状を用いた取引とは、どういう流れなのでしょうか。」
あなた:「典型的な信用状取引の流れは、
- 売買契約に基づき、Dが発行銀行に信用状の発行を依頼し、発行銀行が信用状を発行する。
- 発行銀行によって作成された信用状は、通知銀行に送られ、Eに通知される。
- 売主は信用状に記載された条件に従って船積みを行い、運送人から船荷証券の発行を受ける。
- 売主は、為替手形を作成し、船荷証券とともにFに持参し、割り引いてもらう。
- Fは、船荷証券と為替手形をGに送り、支払いを受ける。
- 発行銀行は、買主にその代金の支払いと引き換えに船荷証券を渡す。
- 買主は運送人に船荷証券を呈示し、船積みした製品を受け取る。
というものです。なお、発行銀行の信用力が一定程度認められ、発行銀行の所在地国のカントリー・リスクも大きくないことを前提としています。」
甲氏:「少し難しいですね。いずれにせよ、弊社としては、あまりリスクは負いたくないです。」
あなた:「Y社と契約交渉も必要かと思いますので、私の知り合いの弁護士を紹介しましょうか。」
甲氏:「よろしくお願いします。」
(設問1)
会話の中の空欄BとCに入る語句と記述の組み合わせとして、最も適切なものはどれか。
C:物品の引渡しと代金の支払いの同時履行を実現することが困難である
C:物品の引渡しと代金の支払いの同時履行を実現することはできるが、売主にとっては、買主が支払わないというリスクを避けられない
C:物品の引渡しと代金の支払いの同時履行を実現することが困難である
C:物品の引渡しと代金の支払いの同時履行を実現することはできるが、売主にとっては、買主が支払わないというリスクを避けられない
(設問2)
会話の中の空欄D~Gに入る語句の組み合わせとして、最も適切なものはどれか。
出典:中小企業診断協会|2021年度 第1次試験問題|経営法務(PDF)
解答
設問1:ア
設問2:ウ
解説
【設問1】
B:送金
C:物品の引渡しと代金の支払いの同時履行を実現することが困難である
英文契約における “by way of remittance” は「送金による支払い」を意味する。送金は買主が一方的に銀行を通じて支払う方法であり、売主にとっては代金不払いのリスクが残る。物品の引渡しと代金支払いが同時に行われる保証がないため、同時履行の確保が困難という問題点がある。
【設問2】
D:買主
E:売主
F:通知銀行
G:発行銀行
信用状取引では、買主が発行銀行に信用状の発行を依頼し、発行銀行が通知銀行を通じて売主に通知する。売主は信用状に従って船積みを行い、通知銀行に為替手形と船荷証券を持参して割引を受ける。通知銀行はそれらを発行銀行に送り、支払いを受ける。最終的に買主が代金を支払って船荷証券を受け取り、製品を引き取る。
学習のポイント
- 国際取引では、送金は売主にとってリスクが高く、信用状(L/C)による支払いが安全性を高める。
- 信用状取引には複数の銀行が関与し、書類取引によって代金支払いと物品引渡しの安全性を確保する。
- 英文契約の支払条項は、支払方法とリスクを正確に読み取る必要がある。
- 荷為替手形や船荷証券など、貿易書類の役割と流れを理解しておくことが重要。