難易度・正答率・重要度
難易度:★★★★☆(応用的な推論や制度比較が必要。)
正答率:★★★☆☆(正答率50〜70%。標準的な難易度。)
重要度:★★★★☆(頻出論点。制度理解に直結。)
問題文
以下の会話は、X株式会社の代表取締役甲氏と、中小企業診断士であるあなたとの間で行われたものである。この会話を読んで、下記の設問に答えよ。なお、「民法の一部を改正する法律」(平成29年法律第44号)により改正された民法が適用されるものとし、附則に定める経過措置は考慮しないものとする。
甲氏:「弊社の製造するタオルにつき、卸売業者であるY社との間で売買契約を締結しようと考えているのですが、Y社の資力に不安があり、何かあったときに売掛金を回収できるようにしておきたいです。とりあえずY社の代表取締役の乙氏に連帯保証人となってもらうことを考えていますが、他に何か良い手段はありますか。」
あなた:「例えば、Y社の第三者に対する複数の債権に対し、まとめて担保を設定する集合債権譲渡担保というものがあります。これは、担保目的で集合債権譲渡契約を締結するものです。そして、A。」
甲氏:「そういった制度があるのですね。Y社の第三者に対する売掛金債権を対象とした場合、預金債権のように譲渡が禁止されている売掛金債権であっても、何かあったときに、当該第三者に対する請求ができるのでしょうか。」
あなた:「譲渡が禁止されている売掛金債権については、当該第三者が債務を履行しない場合において、御社が当該第三者に対し、相当の期間を定めてY社への履行の催告をし、その期間内に履行がないとき等は除き、B。」
甲氏:「なるほど。他には何か良い手段はありますか。Y社と何らかの合意をしない限り、担保は成立しないのでしょうか。」
あなた:「Y社と合意をしなかったとしても、御社がY社にタオルを引き渡し、所有権も移転した場合において、当該タオルに先取特権という権利が成立し、当該タオルを競売することができます。」
甲氏:「当該タオルがY社から小売業者に売られてしまった場合には、どうしようもないのでしょうか。」
あなた:「C。なお、D。」
甲氏:「ありがとうございます。どうすべきか難しいですね。」
あなた:「私の知り合いの弁護士を紹介しますので、一度相談してみてはいかがでしょうか。」
甲氏:「ぜひよろしくお願いします。」
(設問1)
会話の中の空欄AとBに入る記述の組み合わせとして、最も適切なものはどれか。
B:御社が、その禁止に係る特約が締結されたことを知っていた場合には、請求できません
B:御社が、その禁止に係る特約が締結されたことを知り、又は重大な過失によって知らなかった場合には、請求できません
B:御社が、その禁止に係る特約が締結されたことを知り、又は重大な過失によって知らなかった場合には、請求できません
B:御社が、その禁止に係る特約が締結されたことを知り、又は過失によって知らなかった場合には、請求できません
(設問2)
会話の中の空欄CとDに入る記述の組み合わせとして、最も適切なものはどれか。
D:Y社への当該タオルの代金の支払いの前に、御社又は他の一般債権者による差押えがなくとも、支払いの後に、御社又は他の一般債権者による差押えがあれば可能です
D:Y社への当該タオルの代金の支払いの前に、御社又は他の一般債権者による差押えが必要になります
D:Y社への当該タオルの代金の支払いの前に、御社又は他の一般債権者による差押えがなくとも、支払いの後に、御社又は他の一般債権者による差押えがあれば可能です
D:Y社への当該タオルの代金の支払いの前に、御社又は他の一般債権者による差押えが必要になります
出典:中小企業診断協会|2021年度 第1次試験問題|経営法務(PDF)
解答
設問1:ウ
設問2:イ
解説
【設問1】
A:債権譲渡登記をすることで、第三者対抗要件を具備することができます
B:御社が、その禁止に係る特約が締結されたことを知り、又は重大な過失によって知らなかった場合には、請求できません
集合債権譲渡担保においては、債権譲渡登記を行うことで第三者対抗要件を具備することが可能。譲渡禁止特約がある債権については、譲渡人がその特約を知っていた、または重大な過失により知らなかった場合には、債務者に対して請求できない。
【設問2】
C:小売業者に売られた当該タオルの代金債権を差し押さえることができます
D:Y社への当該タオルの代金の支払いの前に、御社又は他の一般債権者による差押えが必要になります
先取特権は、目的物が第三者に売却された場合でも、代金債権に対して差押えを行うことで回収可能。ただし、代金支払い前に差押えを行う必要がある。支払い後では差押えの効力が及ばないため、タイミングが重要。
学習のポイント
- 債権譲渡登記は集合債権譲渡担保の第三者対抗要件として機能する。
- 譲渡禁止特約の存在と認識状況によって、債務者への請求可否が変わる。
- 先取特権は物の代金債権に及ぶが、差押えのタイミングが回収可否を左右する。
- 民法改正後の担保制度や債権譲渡の扱いは、実務上のリスク管理に直結する。