過去問解説(企業経営理論)_2021年(令和3年) 第11問

難易度・正答率・重要度

  • 難易度: ★★☆☆☆(知財戦略の基礎)
  • 正答率: ★★★★☆(正答率70%前後)
  • 重要度: ★★★☆☆(特許制度の理解)

第11問

特許戦略に関する記述として、最も不適切なものはどれか。


特許などの知的財産の権利化に当たっては、数多く出願し、権利化していけばよいのではなく、出願・登録のコストやその後の活用の可能性を踏まえ、選別して出願・権利化し、管理・維持していくことが必要である。
日本国内における 2011 年度から 2018 年度の特許権の利用状況を見ると、自社および他社によって利用されている特許権の割合は、およそ半数にとどまっている。
日本の特許法は、同一の発明について 2 つ以上の特許出願があったときに、先に発明をしたものに権利を付与する「先発明主義」を採用している。
発明を特許として出願すると、一定期間が経過した後に発明の内容が公開されてしまうので、あえて出願せずノウハウとして保持するという選択肢もある。

出典:中小企業診断協会|2021年度 第1次試験問題|企業経営理論(PDF)


解答

正解:ウ


解説

ア:×
 特許は出願・登録にコストがかかるため、無制限に出願するのではなく、活用可能性を見極めて選別する必要がある。記述は正しい。

イ:×
 統計的にも、実際に活用されている特許は全体の半数程度にとどまるとされる。記述は正しい。

ウ:〇(不適切)
 日本の特許法は「先願主義」を採用しており、同一発明については先に出願した者に権利が与えられる。記述の「先発明主義」は米国でかつて採用されていた方式であり、日本の制度とは異なるため不適切。

エ:×
 特許出願は一定期間後に公開されるため、あえて出願せずノウハウとして秘匿管理する「営業秘密」として保持する選択肢も存在する。記述は正しい。


学習のポイント

  • 日本の特許制度:
    「先願主義」を採用。出願の早さが権利取得の決め手。
  • 特許の活用率:
    登録された特許のうち実際に事業で利用されるのは半数程度。
  • 知財戦略の選択肢:
    出願・権利化だけでなく、ノウハウ秘匿(営業秘密)も戦略の一つ。
  • 試験対策のコツ:
    「先願主義=日本」「先発明主義=米国(旧制度)」と整理して覚える。