過去問解説(企業経営理論)_2021年(令和3年) 第24問

難易度・正答率・重要度

  • 難易度: ★★☆☆☆(法令の基本条文理解)
  • 正答率: ★★★★☆(正答率70%前後)
  • 重要度: ★★★☆☆(労働基準法の要点)

第24問

労働基準法の定めに関する記述として、最も適切なものはどれか。


使用者は、事業場ごとに労働者名簿と賃金台帳を調製しなければならず、また、労働者名簿及び賃金台帳など労働関係に関する重要な書類は 10 年以上保存しておかなければならない。
労働基準法には、労働者が女性であることを理由として、賃金について、男性と差別的な取り扱いを禁止する規定はない。
労働基準法の違反行為をした者が、当該事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為した代理人、使用人その他の従業者である場合においては、事業主は処罰されない。
労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならない。

出典: 中小企業診断協会|2021年度 第1次試験問題|企業経営理論(PDF)


解答

正解:エ


解説

ア:×
 保存期間は「10年以上」ではない。労働者名簿は原則「退職後3年」、賃金台帳は「5年」(現行は賃金等請求権の時効延長に伴い5年)が基準で、10年以上保存の規定はない。

イ:×
 労働基準法は女性であることを理由とする賃金差別を明文で禁止している(男女同一賃金の原則)。規定がないという記述は誤り。

ウ:×
 代理人・使用人等が事業主のために違反行為をした場合でも、事業主も罰せられる「両罰規定」がある。事業主は処罰されない、は誤り。

エ:〇
 労働条件は「労働者が人たるに値する生活」を営むための必要を満たすべきものとされる、労働基準法の基本理念に合致する正しい記述。


学習のポイント

  • 保存義務の期間
    労働者名簿や賃金台帳の保存期間は10年以上ではない。名簿は退職後3年、賃金台帳は5年が基準で、過度な長期保存を求める規定ではない。
  • 賃金の性別差別禁止
    女性であることを理由とする賃金差別は明確に禁止されている。男女同一賃金の原則を押さえる。
  • 両罰規定の存在
    従業者が事業主のために違反しても、事業主も処罰対象となる。「従業者だけが罰せられる」は誤り。
  • 基本理念(人たるに値する生活)
    労働条件は人間としての尊厳ある生活の確保を目的とする。条文の根幹を示すキーワードとして暗記しておくと有効。