過去問解説(企業経営理論)_2021年(令和3年) 第25問

難易度・正答率・重要度

  • 難易度: ★★☆☆☆(実務運用の基本)
  • 正答率: ★★★★☆(正答率70%前後)
  • 重要度: ★★★☆☆(労使協定と届出の要否)

第25問

変形労働時間制・フレックスタイム制に関わる労使協定の届出に関する記述として、最も適切なものはどれか。
なお、本問における「労働者の過半数を代表する者」とは「当該事業場に、(又は当該事業場の)労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者」をいう。
「フレックスタイム制」とは「就業規則その他これに準ずるものにより、一定の期間についてあらかじめ定めた総労働時間の範囲内で、その労働者に係る始業及び終業の時刻をその労働者の決定にゆだねる制度」をいう。


使用者は、労働基準法第 32 条の 2 に規定される 1 箇月単位の変形労働時間制を実施するに当たり、労働者の過半数を代表する者との書面による協定を締結したとしても、当該協定を所轄労働基準監督署長に届け出る必要はない。
使用者は、労働基準法第 32 条の 3 に規定されるフレックスタイム制を 1 箇月以内の清算期間にて実施するに当たり、労働者の過半数を代表する者との書面による協定を締結したとしても、当該協定を所轄労働基準監督署長に届け出る必要はない。
使用者は、労働基準法第 32 条の 4 に規定される 1 年単位の変形労働時間制を実施するに当たり、労働者の過半数を代表する者との書面による協定を締結したとしても、当該協定を所轄労働基準監督署長に届け出る必要はない。
使用者は、労働基準法第 32 条の 5 に規定される 1 週間単位の非定型的変形労働時間制を実施するに当たり、労働者の過半数を代表する者との書面による協定を締結したとしても、当該協定を所轄労働基準監督署長に届け出る必要はない。

出典: 中小企業診断協会|2021年度 第1次試験問題|企業経営理論(PDF)


解答

正解:イ


解説

ア:×
 1か月単位の変形は、基本的に就業規則等で設定する枠組みで運用される制度。労使協定を前提にする書きぶり自体が不正確であり、届出の要否以前に前提が誤っている。

イ:〇
 フレックスタイム制は、労使協定で清算期間・総労働時間の決め方などを定める制度だが、協定そのものを所轄労働基準監督署に届け出る手続は求められていない。協定締結は必要、届出は不要という点が正しい。

ウ:×
 1年単位の変形は、労使協定で導入し、その協定について所轄労働基準監督署への手続が求められる運用が前提。届出不要とするのは誤り。

エ:×
 1週間単位の非定型的変形も、労使協定による導入と行政への手続がセットで扱われる制度。届出不要という記述は誤り。


学習のポイント

  • フレックスタイム制の協定と届出
    清算期間や総労働時間の定めは労使協定で必要だが、協定の行政届出は不要。協定は締結・備置で運用する。
  • 1年単位の変形の扱い
    年単位での変形は労使協定で導入し、行政手続(届出)が必要。繁閑差への対応を目的とした制度設計。
  • 1週間単位の非定型的変形の扱い
    小売・旅館等の繁忙に合わせるための枠組みで、労使協定と行政届出がセット。短周期の弾力運用を想定。
  • 1か月単位の変形の位置づけ
    就業規則等でシフトを設計して運用するのが基本で、労使協定届出の文脈とは異なる。選択肢の前提に注意。