過去問解説(企業経営理論)_2021年(令和3年) 第26問

難易度・正答率・重要度

  • 難易度: ★★☆☆☆(賃金支払の原則)
  • 正答率: ★★★★☆(正答率70%前後)
  • 重要度: ★★★☆☆(実務での取り扱い)

第26問

労働基準法における賃金に関する記述として、最も適切なものはどれか。


賃金は、通貨で支払わなければならないが、労働組合がない企業について、労働者の過半数を代表する者との書面による協定があれば、使用者は通勤定期券や自社製品等の現物を賃金の一部として支給することができる。
賃金は、通貨で支払わなければならないが、使用者は労働者の同意を得て、労働者が指定する銀行の労働者本人の預金口座へ振り込む方法で支払うことができる。
労働基準法で賃金とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいうが、就業規則に支給条件が明確に定められている結婚手当は賃金となることはない。
労働者が未成年者である場合には、未成年者は独立して賃金を請求することはできず、親権者又は後見人が、未成年者に代わってその賃金を受け取ることとなる。

出典: 中小企業診断協会|2021年度 第1次試験問題|企業経営理論(PDF)


解答

正解:イ


解説

ア:×
 賃金は現物支給ではなく通貨で支払うのが原則。通勤定期券や自社製品は福利厚生等としてはあり得ても、賃金の代替としての現物支給を正当化する協定という整理は適切ではない。

イ:〇
 賃金の通貨払い原則のもと、労働者の同意を前提に銀行口座振込で支払うことができる。本人名義の口座への振込という実務運用が一般化しており、通貨払いの趣旨に適合する。

ウ:×
 賃金は名称を問わず、労働の対償として支払われるすべてのものを含む。就業規則により支給条件が定められる結婚手当のような手当も、労働の対償として位置づけられる以上、賃金概念に含まれる。

エ:×
 未成年労働者であっても、賃金の受領・請求は本人が独立して行うことができる。親権者や後見人が代わって受け取ることを当然の原則とする整理は誤り。


学習のポイント

  • 通貨払いの原則
    賃金は原則として通貨で支払う。現物による代替は認められないという趣旨を押さえる。
  • 口座振込の適法性
    本人同意と本人名義口座への振込であれば、通貨払いの趣旨に反しない。現代的な支払方法として一般化している。
  • 賃金の範囲(対償性)
    名称にかかわらず、労働の対償として支払われるものは賃金に含まれる。各種手当・賞与も対償性があれば賃金。
  • 未成年者の賃金受領権
    未成年者は自ら賃金を請求・受領できる。保護者が代替することを当然視するのは誤り。