過去問解説(企業経営理論)_2021年(令和3年) 第27問

難易度・正答率・重要度

  • 難易度: ★★☆☆☆(解雇規制の基本)
  • 正答率: ★★★★☆(正答率70%前後)
  • 重要度: ★★★☆☆(保護規定と例外の整理)

第27問

解雇に関する記述として、最も適切なものはどれか。


使用者は、産前産後の女性労働者が労働基準法第 65 条の規定によって休業する期間及びその後 30 日間については、同法第 81 条の規定によって平均賃金の 1,200 日分の打切補償を支払うことで、解雇することができる。
使用者は、事業場に労働基準法又は労働基準法に基づいて発する命令に違反する事実がある場合において、労働者が、その事実を行政官庁又は労働基準監督官に申告したことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取り扱いをしてはならない。
使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後 30 日間は、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となり、所轄労働基準監督署長の認定を受けた場合でも解雇することはできない。
使用者は、労働者を解雇しようとする場合、少なくとも 21 日前にその予告をしなければならず、21 日前に予告をしない場合には、21 日分以上の平均賃金を支払わなければならない。

出典: 中小企業診断協会|2021年度 第1次試験問題|企業経営理論(PDF)


解答

正解:イ


解説

ア:×
 産前産後の休業期間およびその後の一定期間は、解雇が禁止される保護期間に当たる。打切補償の支払いで解雇が可能になるわけではない。

イ:〇
 法令違反の事実を労働者が行政へ申告したことを理由とする解雇や不利益取扱いは禁じられる。申告者の保護が趣旨であり、報復的措置は認められない。

ウ:×
 業務上の傷病による休業期間およびその後の一定期間は原則として解雇が禁止されるが、事業継続が不可能となるやむを得ない事由が認められた場合には例外があり得る。「認定があっても解雇できない」とするのは誤り。

エ:×
 解雇予告は原則としてより長い期間が求められ、予告を行わない場合の予告手当もそれに対応する。21日という短い期間・金額の提示は不適切である。


学習のポイント

  • 申告者保護(報復の禁止)
    労働者が法令違反を行政へ申告したことを理由とする解雇や不利益取扱いは禁じられる。内部・外部の通報行為を保護する仕組み。
  • 産前産後休業中の解雇制限
    産前産後の休業期間およびその後の一定期間は解雇禁止の保護対象。補償の支払いで解雇が正当化されることはない。
  • 労災休業中の解雇制限と例外
    業務上傷病による休業中とその後の一定期間は解雇禁止が原則。ただし、事業継続が不可能なやむを得ない事由が認められる場合には例外があり得る。
  • 解雇予告と予告手当の水準
    予告期間は原則として十分な日数が必要で、予告しない場合は相応の予告手当を支払う。短い期間や金額の提示は誤り。