過去問解説(企業経営理論)_2021年(令和3年) 第29問

難易度・正答率・重要度

  • 難易度: ★★☆☆☆(知覚とマーケの基礎)
  • 正答率: ★★★★☆(正答率70%前後)
  • 重要度: ★★★☆☆(感性・クロスモーダル)

第29問

消費者の知覚に対応したマーケティングに関する記述として、最も適切なものはどれか。


色に対する消費者の反応は、色の物理的な波長に対する消費者の知覚であり、強い感情反応を引き出す。このため、個々の消費者が経験を通じて学習する連想には影響されない。
音や音楽は消費者の感情や行動に強い影響を及ぼすため、企業は自社のブランド・ロゴなどと、特定の音や音楽との固定的な結びつきを作らないように細心の注意を払う必要がある。
オンライン販売では、実際の製品に触れる体験をオンライン上で提供することはできないが、視覚を通じて製品の重さを知覚させることは可能である。
消費者の味覚は主に口腔内に存在する味覚受容体を介した反応であるから、文化的要因が消費者の実際の味の評価に影響を及ぼすことはない。
においは脳の最も原始的な部分である大脳辺縁系で処理されるため、消費者の行動に対する直接の影響はほとんど見られない。

出典: 中小企業診断協会|2021年度 第1次試験問題|企業経営理論(PDF)


解答

正解:ウ


解説

ア:×
 色の反応は物理特性だけで決まらず、文化・文脈・経験に基づく連想(学習)に強く影響される。色の意味づけは可塑的で、固定的ではない。

イ:×
 音や音楽はブランド認知を高めるために意図的に結びつける(ソニック・ブランディング)が一般的。固定的結びつきを避けるべきという主張は不適切。

ウ:〇
 触覚は提供しにくいが、視覚的手がかり(サイズ、素材感、陰影、動き)により「重さ」などの物性を視覚的に推定・知覚させることは可能。

エ:×
 味の評価は受容体だけでなく、文化・記憶・期待・ネーミングなどに影響される。文化的要因を無視するのは誤り。

オ:×
 嗅覚は感情・記憶と強く結びつき、購買・滞在行動に影響する。影響がほとんどないという記述は誤り。


学習のポイント

  • クロスモーダル知覚
    視覚の手がかりで重さや質感を推定するなど、異なる感覚が相互に影響し合う。オンラインでも知覚設計は可能。
  • 学習と連想の役割
    色・音・形状の意味は経験や文化で形成される。固定的反応ではなく、文脈に依存する。
  • ソニック・ブランディング
    音や音楽をブランド資産として設計し、ロゴや体験と一貫した聴覚的シグナルで認知・記憶を強化する。
  • 嗅覚の行動影響
    においは感情・記憶を喚起し、滞在時間や購買意欲に影響する。店舗・パッケージでの香り設計が有効。