過去問解説(企業経営理論)_2021年(令和3年) 第30問

難易度・正答率・重要度

  • 難易度: ★★☆☆☆(共創とシーズ志向の理解)
  • 正答率: ★★★★☆(正答率70%前後)
  • 重要度: ★★★☆☆(製品開発アプローチの整理)

第30問

近年は、企業(メーカー)と消費者が共に製品開発を行う共創(co-creation)が多くの企業によって導入されている。このことに関する記述として、最も適切なものはどれか。


企業が企業外部のアイデアを取り入れながら価値を創造するオープン・イノベーションでは、企業は一貫して自社内のアイデアが外部に出ることがないように留意する必要がある。
企業は共創によって新奇性の高い製品を開発できる可能性があるものの、当該製品を購入する消費者から見た場合は、共創によって開発された製品は企業が開発した製品より信頼性が劣ると感じる傾向がある。このため企業は、その製品が共創によって開発されたという事実を伏せて発売することが望ましい。
共創によって消費者と共に製品開発を行おうとする企業が増えつつある現状に対抗して、伝統的な方法により自社内の経営資源のみに基づいて製品開発を行う方が優れた製品を開発できると考える企業もあり、このような企業の考え方や行動様式は一般に「シーズ志向」と呼ばれることが多い。
伝統的な製品開発では、企業が意思決定を行うために、専門的な知識を有していたり、製品の特殊な使い方を提案したりするなどの先進的消費者を対象とした市場調査が実施される場合が多かった。これに対して共創においては、一般に市場の平均的消費者に関するビッグデータが用いられる。

出典: 中小企業診断協会|2021年度 第1次試験問題|企業経営理論(PDF)


解答

正解:ウ


解説

ア:×
 オープン・イノベーションは外部の知識や技術を積極的に取り入れる考え方であり、自社内のアイデアが外部に出ないようにするのは逆の発想。誤り。

イ:×
 共創製品が信頼性に劣るとする一般的傾向はなく、むしろ消費者参加は信頼性や愛着を高める効果がある。事実を伏せる必要はない。

ウ:〇
 自社の技術や経営資源を起点に製品開発を進める考え方は「シーズ志向」と呼ばれる。共創や市場志向と対比される概念であり、記述は適切。

エ:×
 伝統的な市場調査は必ずしも先進的消費者に限定されるわけではない。また、共創は平均的消費者のビッグデータ活用に限らず、参加型の協働を重視する。


学習のポイント

  • 共創(co-creation)の特徴
    消費者や外部パートナーと協働し、製品やサービスを共に開発する。参加意識やブランド愛着を高める効果がある。
  • シーズ志向とニーズ志向
    シーズ志向=自社の技術・資源を起点に開発。
    ニーズ志向=市場や顧客の要望を起点に開発。
    共創はニーズ志向に近いが、消費者を直接巻き込む点が特徴。
  • オープン・イノベーションとの違い
    オープン・イノベーションは外部知識の活用を重視。共創は消費者を含む多様な主体と協働する点で重なるが、消費者参加の色合いが強い。
  • 試験対策のコツ
    「シーズ志向=自社起点」「共創=消費者参加」「オープン・イノベーション=外部知識活用」と整理して区別する。