過去問解説(企業経営理論)_2021年(令和3年) 第31問

難易度・正答率・重要度

  • 難易度: ★★☆☆☆(オムニチャネルの基本理解)
  • 正答率: ★★★★☆(正答率70%前後)
  • 重要度: ★★★☆☆(流通政策の方向性)

第31問

S社は国内外から仕入れたさまざまなスポーツ・シューズを、9つの自社の実店舗および数年前に開設した自社オンライン店舗において販売している。S社の今後の流通政策に関する記述として、最も適切なものはどれか。


S社が店舗を最初の 1 つから現在の状態まで増やしてきた過程においては、顧客接点が物理的に増加した。今後同社がオムニチャネル化を進めるためには、顧客管理方法を変更することが必要であるが、現在の顧客接点をさらに増やすことは必ずしも必要ではない。
S社では、9つの実店舗で多くの顧客が商品を見たり試着したりした後にオンライン店舗で購入すると、オンライン店舗に売り上げが偏り、9つある実店舗の従業員のモチベーションが低下するリスクがある。このため、S社は顧客が実店舗からオンライン店舗へ流れることを防いだ方がよい。
近年は同一の消費者であっても、実店舗を利用する場合とオンライン店舗を利用する場合とでは、利用動機や購入頻度、単価などが大きく異なることが顧客データから分かってきた。このため、実店舗における顧客データとオンライン店舗のそれとは切り離して活用することが望ましい。
顧客対応のための組織体制や従業員の評価システム、在庫データの管理などの観点からは、各顧客には検討から購入までを一貫して同一店舗内で行ってもらうことが望ましい。S社がオムニチャネル化の推進の可否を今後検討していく上では、こうした点を十分に考慮する必要がある。
消費者便益の観点からは、店舗外でもパソコンやスマートフォンなどからいつでも購入できるオンライン店舗に明らかにメリットがある。このため今後S社はオンライン販売を重視し、オンライン店舗に経営資源を集中することが望ましい。

出典: 中小企業診断協会|2021年度 第1次試験問題|企業経営理論(PDF)


解答

正解:ア


解説

ア:〇
 オムニチャネル化の本質は「顧客接点の数を増やす」ことではなく、「既存の接点を統合し、顧客体験を一貫させる」ことにある。したがって、顧客管理方法の変更が必要であり、接点の単純な追加は必須ではない。

イ:×
 チャネル間のカニバリゼーションは一見リスクに見えるが、オムニチャネルではむしろチャネル間の相互補完を重視する。顧客の流れを制限するのは不適切。

ウ:×
 実店舗とオンライン店舗のデータを切り離すのではなく、統合して顧客の全体像を把握することがオムニチャネルの基本。分断は逆効果。

エ:×
 顧客にチャネルを固定させるのではなく、自由に行き来できるようにするのがオムニチャネルの狙い。記述は逆の発想。

オ:×
 オンラインの利便性は重要だが、実店舗の体験価値も依然として大きい。オンラインに資源を集中させるのは短絡的で、統合的戦略が必要。


学習のポイント

  • オムニチャネルの本質
    顧客接点を増やすこと自体ではなく、既存の接点を統合し、シームレスな顧客体験を提供することが重要。
  • チャネル間の関係性
    実店舗とオンラインは競合ではなく補完関係。顧客の行動を制限するのではなく、自由な選択を支援する。
  • データ統合の重要性
    実店舗・オンライン双方の顧客データを統合管理し、顧客理解を深めることがオムニチャネル戦略の基盤。
  • 試験対策のコツ
    「接点の数より統合」「制限より補完」「分断より統合」というキーワードで整理すると理解しやすい。