過去問解説(企業経営理論)_2021年(令和3年) 第34問

難易度・正答率・重要度

  • 難易度: ★★☆☆☆(クチコミの基本理解)
  • 正答率: ★★★★☆(正答率70%前後)
  • 重要度: ★★★☆☆(消費者行動の基礎)

第34問

クチコミに関する記述として、最も適切なものはどれか。


ある消費者に対して、その消費者がまだ全く知らない製品やサービスについて知らせるためには、広告よりクチコミの方が受け入れられやすい傾向がある。
一般的に大規模なオンライン・コミュニティでは、自ら発言や投稿をせずに他の参加者の様子を見ているだけの参加者が全体の半分程度含まれることが知られている。このような参加者はオンライン・コミュニティに悪影響を及ぼすため、企業がオンライン・コミュニティを開設しマーケティングに活用する際には、すべての参加者が活発に発言するように誘導するべきである。
コミュニティとは一般に共通の関心や地理、職業などによって参加者が結びついた集団を指す。中でもオンライン・コミュニティはソーシャルメディア上に開設されるものが多いため、地理、職業などの社会的要因を軸に参加者が結びつくことが特徴である。対照的にオフライン・コミュニティでは、参加者が共通の関心によって結びつくものが多い。
ネガティブなクチコミほど広まりやすいことが知られているが、このことからも分かるように消費者は製品やサービスの欠点を確認し回避するためにクチコミを利用する傾向が強い。これに対して、製品やサービスの長所を確認するために参照する情報としては、企業が発信する広告の方が全般的に信頼できる。

出典: 中小企業診断協会|2021年度 第1次試験問題|企業経営理論(PDF)


解答

正解:ア


解説

ア:〇
 クチコミは広告よりも信頼性が高いと受け止められる傾向があり、特に消費者がまだ知らない製品やサービスを知るきっかけとして有効である。身近な人や第三者の体験談は、広告よりも受け入れられやすい。

イ:×
 オンライン・コミュニティには「ラーカー(閲覧専門の参加者)」が多く存在するが、これは必ずしも悪影響ではない。閲覧者も情報拡散や潜在的な影響力を持つため、全員に発言を強制する必要はない。

ウ:×
 オンライン・コミュニティは地理や職業よりも「共通の関心」に基づく結びつきが中心である。オフライン・コミュニティが地理的・社会的要因に基づくことが多いのとは逆である。

エ:×
 ネガティブなクチコミは広まりやすいが、消費者は長所を確認する際にもクチコミを参照する。広告が全般的に信頼できるとするのは誤りで、むしろ広告よりクチコミの方が信頼されやすい。


学習のポイント

  • クチコミの信頼性
    消費者は広告よりも第三者の意見を信頼する傾向が強い。特に新しい製品やサービスの認知に効果的。
  • オンライン・コミュニティの参加形態
    発言しない「ラーカー」も重要な存在であり、コミュニティの健全性を損なうものではない。
  • オンラインとオフラインの違い
    オンライン=共通の関心、オフライン=地理・職業など社会的要因、という整理が有効。
  • ネガティブ vs ポジティブ
    ネガティブなクチコミは拡散しやすいが、ポジティブなクチコミも購買意思決定に大きく影響する。
  • 試験対策のコツ
    「広告よりクチコミが信頼されやすい」「ラーカーは悪ではない」「オンラインは関心ベース」という3点を押さえると正解にたどり着きやすい。