過去問解説(企業経営理論)_2021年(令和3年) 第38問

難易度・正答率・重要度

  • 難易度: ★★★☆☆(顧客関係管理の理解)
  • 正答率: ★★★☆☆(正答率60%前後)
  • 重要度: ★★★☆☆(CRM・ロイヤルティ戦略)

解答

  • 設問1:オ
  • 設問2:エ

解説(設問1)

ア:×
 顧客シェアは「ある顧客の購買総額に占める自社の割合」を意味する。移動サービス全体を考慮する必要があり、航空会社間だけに限定するのは誤り。

イ:×
 インターネット通販は利便性が高いが、すべての顧客にとって価値が高いとは限らない。配送待ちや実物確認不可などの制約もある。

ウ:×
 顧客生涯価値(CLV)は「顧客1人が生涯にわたり企業にもたらす利益の現在価値」を指す。既存顧客と潜在顧客を合算するのは誤りであり、また高所得=必ずしも高CLVではない。購買頻度や継続性が重要。

エ:×
 顧客価値は「顧客が感じる価値=ベネフィット-コスト」であり、企業にとっての収益性を直接意味するものではない。記述は顧客価値と顧客収益性を混同している。

オ:〇
 顧客満足は「期待と実際のパフォーマンスの差」で決まるが、事前期待そのものが満足度に影響することもある。特に経験財や信頼財のように事前評価が難しい場合、期待が満足度を強く規定する。


解説(設問2)

ア:×
 真のロイヤルティと見せかけのロイヤルティは区別される。顧客価値・満足を通じて形成されるのは基本的に真のロイヤルティであり、見せかけのロイヤルティは価格や立地など外的要因による。

イ:×
 収益性分析の対象は購買履歴のある顧客だが、潜在的ロイヤルティ顧客はまだ購買していないため含まれない。

ウ:×
 潜在的ロイヤルティ顧客は有望だが、すべてをリスト化して個別勧誘するのは非効率。市場条件を整備し、自然に購買に結びつける戦略が適切。

エ:〇
 見せかけのロイヤルティを持つ赤字顧客には、サービス制限や価格調整で収益性を確保することが望ましい。退出を促す戦略もCRM上の合理的対応である。


学習のポイント

  • 顧客価値と顧客満足
    顧客価値=ベネフィット-コスト。顧客満足=期待と実際の差。経験財では期待が満足度に直結する。
  • 顧客ロイヤルティの分類
    ・真のロイヤルティ:態度的にも行動的にも忠誠。
    ・見せかけのロイヤルティ:外的要因で一時的に継続。
    ・潜在的ロイヤルティ:態度は好意的だが行動が伴わない。
  • 顧客生涯価値(CLV)
    高所得よりも「継続購買・頻度・利益率」が重要。
  • CRM戦略の実務
    赤字顧客にはサービス制限や価格調整で対応。優良顧客には関係強化投資を集中。
  • 試験対策のコツ
    「顧客価値=ベネフィット-コスト」「満足=期待と実際の差」「ロイヤルティは真・見せかけ・潜在の3分類」と整理すると理解しやすい。