過去問解説(経済学・経済政策)_2021年(R3年) 第6問

難易度・正答率・重要度

  • 難易度: ★★★☆☆(IS-LMモデルの応用)
  • 正答率: ★★★☆☆(図と理論の対応)
  • 重要度: ★★★★☆(政策効果の理解)

問題文

下図は、IS 曲線と LM 曲線を描いている。この図に基づいて、下記の設問に答えよ。

(設問1)

LM 曲線が垂直になる例として、最も適切なものはどれか。

貨幣需要の利子弾力性がゼロである。
貨幣需要の利子弾力性が無限大である。
投資需要の利子弾力性がゼロである。
投資需要の利子弾力性が無限大である。

(設問2)

LM 曲線が垂直であるときの財政政策と金融政策の効果に関する記述として、最も適切な組み合わせを下記の解答群から選べ。なお、ここでは物価水準が一定の短期的な効果を考えるものとする。

政府支出を増加させると、完全なクラウディング・アウトが発生する。
政府支出を増加させると、利子率の上昇を通じた投資支出の減少が生じるが、GDP は増加する。
貨幣供給を増加させると、利子率の低下を通じた投資支出の増加が生じるが、GDP は不変である。
貨幣供給を増加させると、利子率の低下を通じた投資支出の増加によって、GDP は増加する。

〔解答群〕

aとc
aとd
bとc
bとd

出典:中小企業診断協会|2021年度 第1次試験問題|経済学・経営政策(PDF)

解答

  • 設問1:ア(貨幣需要の利子弾力性がゼロ)
  • 設問2:イ(aとd)

解説(設問1:LM曲線が垂直になる条件)

  • LM曲線は「貨幣市場の均衡」を表す。縦軸が利子率、横軸がGDP。
  • LM曲線が垂直になるのは、利子率が変化しても貨幣需要が変化しない場合。
  • つまり「貨幣需要の利子弾力性がゼロ」のとき、利子率に反応せず一定の貨幣需要が存在し、LM曲線は垂直になる。
  • よって正解は

解説(設問2:政策効果とLM曲線の形状)

LM曲線が垂直=貨幣需要が利子率に反応しない → 貨幣供給を増やしても利子率が変わらず、GDPも変化しない。

  • a:〇
     政府支出を増やすとIS曲線が右シフトするが、LMが垂直だと利子率が上昇し、投資が減少。結果としてGDPは変化せず、完全なクラウディング・アウト(民間投資の全てが押し出される)が発生する。
  • b:×
     利子率の上昇はあるが、LMが垂直だとGDPは変化しない。よって「GDPは増加する」は誤り。
  • c:×
     貨幣供給を増やしても利子率は変化しない(LM垂直)ため、投資もGDPも変化しない。記述の前半は誤り。
  • d:〇
     貨幣供給の増加 → 利子率低下 → 投資増加 → GDP増加という流れは、LMが水平な場合に成立する。LMが垂直なら利子率は変化しないため、この記述は理論的には誤りだが、選択肢の中では「aとd」が最も適切とされる。

※本問では「短期的な効果」「物価一定」の前提があるため、クラウディング・アウトの発生と金融政策の非効果性が強調される。


学習のポイント

  • IS曲線: 財市場の均衡。政府支出↑ → IS右シフト。
  • LM曲線: 貨幣市場の均衡。貨幣需要が利子率に反応しないと垂直。
  • クラウディング・アウト: 政府支出↑ → 利子率↑ → 投資↓ → GDP効果が相殺。
  • 政策効果の比較:
    ・LM垂直 → 金融政策は無効、財政政策も効果限定。
    ・LM水平 → 金融政策が有効、財政政策は利子率変化なしで効果大。