難易度・正答率・重要度
- 難易度:★★★☆☆(複数知識の統合や、誤答肢の吟味が必要。)
- 正答率:★★★☆☆(正答率50〜70%。標準的な難易度。)
- 重要度:★★★★☆(頻出論点。制度理解に直結。)
問題文
以下の会話は、X株式会社(以下「X社」という。)の代表取締役甲氏と、中小企業診断士であるあなたとの間で行われたものである。この会話に基づき下記の設問に答えよ。
なお、本問における甲氏とあなたとの間の会話内の会社分割は、吸収分割のことを指している。
甲氏:「弊社の事業の一部である b 事業の業績が芳しくないので、b 事業を他の会社に売って、弊社の経営資源を a 事業に集中したいと思っています。先日、資本関係にない株式会社であるY社から、b 事業を買いたいという話がありました。Y社の担当者によれば、方法としては、事業譲渡の方法と会社分割の方法があり、会社分割は吸収分割とのことでした。私は、b 事業を売った対価を金銭としたいと思ったのですが、事業譲渡と会社分割とでは違いが生じるのでしょうか。」
あなた:「A。」
甲氏:「なるほど。その後、私が、弊社の経理部長乙氏に意見を聞いたところ、乙氏は、『これを機会にY社の株式を取得して、Y社との関係を深めてはどうか。』と話していました。b 事業を売った対価を株式とすることは、事業譲渡と会社分割のいずれでもできるのでしょうか。」
あなた:「B。」
甲氏:「ありがとうございます。事業譲渡によるのか、会社分割によるのかは、弊社内で再度検討します。ところで、事業譲渡と会社分割の手続きを少しお聞きしたいのですが、それぞれの手続きで違うところはあるのでしょうか。」
あなた:「C。」
甲氏:「分かりました。ありがとうございます。」
(設問1)
会話の中の空欄AとBに入る記述の組み合わせとして、最も適切なものはどれか。
B:事業譲渡の場合では対価を株式とすることはできませんが、会社分割の場合では対価を株式とすることはできます
B:事業譲渡の場合でも、会社分割の場合でも、対価を株式とすることはできます
B:事業譲渡の場合では対価を株式とすることはできませんが、会社分割の場合では対価を株式とすることはできます
B:事業譲渡の場合でも、会社分割の場合でも、対価を株式とすることはできます
(設問2)
会話の中の空欄Cに入る記述として、最も適切なものはどれか。
なお、事業譲渡及び会社分割のいずれの場合においても、当該株主総会の承認決議と同時に解散決議をするものではなく、また、簡易手続(簡易事業譲渡、簡易会社分割)によるものではないものとする。
出典:中小企業診断協会|2022年度 第1次試験問題|経営法務(PDF)
解答
設問1:エ
設問2:ウ
解説
【設問1】
ア:×
会社分割でも金銭を対価とすることは可能。会社分割では金銭が使えないとする記述は誤り。
イ:×
事業譲渡でも株式を対価とすることは可能。事業譲渡では株式が使えないとする記述は誤り。
ウ:×
金銭による対価は両制度で可能だが、事業譲渡では株式が使えないとする記述が誤り。
エ:〇
事業譲渡でも会社分割でも、金銭・株式・その他財産を対価とすることができる。両制度に共通する正しい記述。
【設問2】
ア:×
会社分割でも反対株主の保護制度として、株式買取請求権が認められている。事業譲渡に限るとする記述は誤り。
イ:×
事業譲渡の効力は契約の履行によって発生する。登記によって効力が発生するとする記述は誤り。
ウ:〇
会社分割では、契約内容などの事前開示書類を一定期間備え置く義務がある。事業譲渡にはそのような制度はない。
エ:×
会社分割でも債権者保護手続が定められている。事業譲渡に限るとする記述は誤り。
学習のポイント
- 事業譲渡と会社分割のいずれも、対価は金銭・株式・その他財産で柔軟に設定できる。
- 会社分割でも反対株主の保護制度や債権者保護手続が存在するため、事業譲渡との違いを正確に把握する必要がある。
- 会社分割では、契約内容の事前開示や備置義務など、手続面での特徴がある。
- 両制度の違いは、実務上の選択や株主・債権者対応に直結するため、制度趣旨と手続の違いを整理しておくことが重要。