過去問解説(経営法務)_2022年(R4年) 第6問

難易度・正答率・重要度

  • 難易度:★★☆☆☆(基本知識の組み合わせ。やや思考を要する。)
  • 正答率:★★★★☆(正答率70〜90%。比較的易しい。)
  • 重要度:★★★★☆(頻出論点。制度理解に直結。)

問題文

以下の会話は、甲氏と、中小企業診断士であるあなたとの間で行われたものである。この会話に基づき下記の設問に答えよ。

甲氏:「最近、私の友人が株式会社を立ち上げました。私も、株式会社をつくって、事業をやりたいと思います。友人の株式会社は、公開会社ではない株式会社と聞きました。公開会社ではない株式会社とは、どのような会社ですか。」

あなた:「公開会社ではない株式会社とは、発行する全部の株式が譲渡制限株式である会社をいいます。」

甲氏:「公開会社ではない株式会社には、どのような特徴があるのでしょうか。」

あなた:「公開会社ではない株式会社の場合には、A。」

甲氏:「ありがとうございます。今後、実際に株式会社を設立する場合、どのような点に注意すればよいのでしょうか。」

あなた:「B。」

甲氏:「ありがとうございます。分からないことがあったら、またお伺いします。」


(設問1)

会話の中の空欄Aに入る記述として、最も適切なものはどれか。

議決権制限株式を発行するときは、発行済株式総数の2分の1以下までしか発行できません
社債を発行することはできません
剰余金の配当を受ける権利に関する事項について、株主ごとに異なる取扱いをする旨を定款で定めることができます
定款で株券を発行する旨を定めることはできません

(設問2)

会話の中の空欄Bに入る記述として、最も適切なものはどれか。

株式会社を設立するに当たって作成する定款には、商号を記載又は記録しなければなりませんので、考えておくとよいでしょう
株式会社を設立するに当たって作成する定款は、電磁的記録により作成することはできませんので、注意してください
株式会社を募集設立によって設立する場合、最低資本金の額は300万円となりますので、注意してください
発起人は3名以上でなければなりませんので、甲氏のほかに発起人となってくれる人を探しておくとよいでしょう

出典:中小企業診断協会|2022年度 第1次試験問題|経営法務(PDF)


解答

設問1:ウ
設問2:ア


解説

【設問1】

ア:×
議決権制限株式の発行割合に上限はない。発行済株式総数の2分の1以下に制限されるという記述は誤り。

イ:×
公開会社でない株式会社でも社債の発行は可能。社債発行ができないとする記述は誤り。

ウ:〇
公開会社でない株式会社では、株主ごとに異なる配当の取扱いを定款で定めることができる。柔軟な設計が可能な点が特徴。

エ:×
株券の発行は定款で定めることができる。定められないとする記述は誤り。

【設問2】

ア:〇
定款には商号の記載が必要。設立準備として商号を考えておくことは適切な助言。

イ:×
定款は電磁的記録による作成も可能。紙でなければならないとする記述は誤り。

ウ:×
最低資本金制度はすでに廃止されており、300万円の要件は存在しない。記述は誤り。

エ:×
発起人は1名でも可能。3名以上が必要とする記述は誤り。


学習のポイント

  • 公開会社でない株式会社は、譲渡制限株式のみを発行する会社であり、定款設計の自由度が高い。
  • 株主ごとの配当条件や議決権の制限など、柔軟な株式設計が可能。
  • 定款には商号・目的・本店所在地などの基本事項を記載する必要がある。
  • 設立手続では、電磁的記録による定款作成や発起人1名での設立も認められており、旧制度との混同に注意。