過去問解説(経営法務)_2022年(R4年) 第21問

難易度・正答率・重要度

  • 難易度:★★★★☆(相続法の具体的適用。図解読解力が必要。)
  • 正答率:★★★☆☆(正答率50〜70%。標準的な難易度。)
  • 重要度:★★★★☆(実務でも重要な相続分配の理解。)

問題文

被相続人Xが死亡し、相続が生じた。AはXの配偶者である。B、C、E及びGはA及びXの子である。DはCの配偶者であり、I及びJはC及びDの子である。FはEの配偶者であり、KはE及びFの子である。HはGの配偶者であり、GとHとの間には胎児Lがおり、胎児LはX死亡後に生きて生まれた。

なお、A、C及びGはX死亡以前に死亡しており、Eは相続放棄をしている。

【家系図(縦型ツリー構造)】

X(被相続人)
└─ 亡A(配偶者)
├─ B(健在)
├─ 亡C
│   ├─ D(配偶者)
│   └─ I・J(代襲相続)
├─ E(相続放棄)
│   ├─ F(配偶者)
│   └─ K(相続権なし)
└─ 亡G
    ├─ H(配偶者)
    └─ L(胎児→出生済・代襲相続)

この場合、Xの相続財産について、それぞれの相続人が相続する割合として、最も適切なものはどれか。

なお、遺言はなく、遺産分割協議も整っておらず、相続人はいずれも廃除されていないものとし、寄与分及び特別受益についても考慮しないものとする。


〔選択肢〕

Bが3分の1、Iが6分の1、Jが6分の1、Kが3分の1を相続する。
Bが3分の1、Iが6分の1、Jが6分の1、Lが3分の1を相続する。
Bが4分の1、Iが4分の1、Jが4分の1、Lが4分の1を相続する。
Bが4分の1、Iが8分の1、Jが8分の1、Kが4分の1、Lが4分の1を相続する。

出典:中小企業診断協会|2022年度 第1次試験問題|経営法務(PDF)


解答

正解:イ
Bが3分の1、Iが6分の1、Jが6分の1、Lが3分の1を相続する。


解説

【前提整理】

  • 被相続人Xの配偶者Aは既に死亡 → 配偶者相続なし。
  • 子Bは健在 → 直接相続人。
  • 子C・Gは死亡 → 代襲相続が発生。
  • 子Eは相続放棄 → その系統は相続権なし。
  • 胎児Lは出生済 → 相続権あり(民法第886条)。

【相続人の確定】

  • Xの子は4人(B、C、E、G)だが、C・Gは死亡、Eは放棄。
  • よって、B(本人)、Cの子(I・J)、Gの胎児Lが相続人。
  • Cの子I・Jは代襲相続人。
  • Gの胎児Lは出生により代襲相続人となる。

【相続分の計算】

  • 本来の子4人で均等 → 1人あたり1/4。
  • Eは放棄 → その分は他の相続人に分配されない。
  • Cの子I・Jが1/4を2分割 → 各1/8(=6分の1)。
  • Gの子Lが1/4 → 3分の1。
  • Bが1/4 → 3分の1。

→ よって、

  • B:3分の1
  • I:6分の1
  • J:6分の1
  • L:3分の1

学習のポイント

  • 相続放棄がある場合、その分は他の相続人に分配されない(法定相続分の再計算は不要)。
  • 代襲相続は直系卑属に限られ、胎児も出生すれば相続権を有する。
  • 相続図を正確に読み取り、誰が代襲するか、誰が除外されるかを見極める力が問われる。
  • 相続分は「頭割り」→「代襲分割」の順で計算する。