難易度・正答率・重要度
- 難易度: ★★☆☆☆(古典フレームの基本)
- 正答率: ★★★★☆(正答率70%前後)
- 重要度: ★★★☆☆(資源配分の定番理論)
問題文
ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)が開発した「プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント」(以下「PPM」という)と、その分析ツールである「プロダクト・ポートフォリオ・マトリックス(または「成長-シェア・マトリックス」)」に関する記述として、最も適切なものはどれか。
ア
PPM では、「金のなる木」で創出した資金を「花形」に投資して、次世代を担う事業を育成することが、最適な企業成長を図る上での中核的なシナリオとして想定されている。
イ
PPM では、「負け犬」に位置づけられる事業は「収穫(harvest)」ないし「撤退(withdraw)」の対象とすることが、望ましいとされる。
ウ
PPM は企業における事業のポートフォリオを検討する手段であることから、そこでは、ヒト、モノ、カネといった経営資源に関する事業間のシナジーは、考慮されない。
エ
プロダクト・ポートフォリオ・マトリックスの縦軸は、当該企業の各事業(戦略事業単位(SBU))の成長率で構成される。
オ
プロダクト・ポートフォリオ・マトリックスの横軸は、各事業(戦略事業単位(SBU))が属する業界の集中度を示すエントロピー指数で構成される。
出典:中小企業診断協会|2022年度 第1次試験問題|企業経営理論(PDF)
解答
正解:イ
解説
ア:×
資金循環の基本は「金のなる木(Cash Cow)」から「問題児(Question Mark)」へ投資し、将来の「花形(Star)」へ育成すること。既に花形へ投資するのが中核シナリオという記述は誤り。
イ:〇
「負け犬(Dog)」は低成長・低シェアで収益性も低いことが多く、一般に「収穫(harvest)」や「撤退(divest/withdraw)」の対象とするのが望ましい。
ウ:×
PPMは市場成長率と相対的市場シェアによる単純化が特徴で、事業間シナジーなどの要素を「考慮しない限界」がある。ただし「考慮されない」と断定するのは不適切。PPM単体では反映しづらいという理解が正確。
エ:×
縦軸は「市場成長率(Industry Growth Rate)」であり、SBUの自社売上成長率ではない。
オ:×
横軸は「相対的市場シェア(Relative Market Share)」であり、エントロピー指数ではない。
学習のポイント
- PPMの軸
縦軸=市場成長率、横軸=相対的市場シェア。 - 各象限の基本戦略
- 花形(Star):投資を継続し、将来の金のなる木へ育成。
- 金のなる木(Cash Cow):安定的に資金を生み出す。投資は抑制し、資金源として活用。
- 問題児(Question Mark):投資して花形に育てるか、撤退するかの選択が必要。
- 負け犬(Dog):収益性が低く、収穫や撤退が望ましい。
- PPMの意義
事業ポートフォリオを「資金の流れ」と「成長性」で俯瞰でき、経営資源の配分を合理的に考えるフレームワーク。 - PPMの限界
事業間シナジー、競争優位の質、参入障壁、学習曲線などは反映されにくい。補助的にバリューチェーン分析やコア・コンピタンス分析と組み合わせる必要がある。 - 試験対策のコツ
「縦軸=市場成長率」「横軸=相対的市場シェア」という基本を確実に押さえる。各象限の基本戦略をセットで覚えると混乱しにくい。