過去問解説(企業経営理論)_2022年(令和4年) 第4問

難易度・正答率・重要度

  • 難易度: ★★☆☆☆(市場シェアと競争戦略の基礎)
  • 正答率: ★★★★☆(正答率70%前後)
  • 重要度: ★★★☆☆(チャレンジャー戦略の定番)

問題文

次の文章を読んで、下記の設問に答えよ。

消費財を生産・販売するX業界における市場シェア(占有率)は、以下のとおりである。

A社 45% / B社 30% / C社 15% / D社 10%

なお、B社はA社と比較して市場シェアでは劣るものの、製品技術の面では、X業界でA社と対抗できるだけの経営資源を保有している。


(設問1)
X業界におけるB社の相対市場シェアとして、最も適切なものはどれか。なお、小数点第3位を四捨五入とする。

0.30
0.33
0.67
1.50
2.00

(設問2)
X業界におけるB社の市場地位や状況を前提とした場合、B社の戦略として最も適切なものはどれか。

A社から市場シェアを奪取しようとする場合には、経営資源を、すべての市場セグメントに偏りなく投入するのではなく、特定の市場セグメントに集中的に投入する。
A社よりも低価格の製品を供給するフォロワーとして、A社からの攻撃を回避する。
A社をはじめとする競合企業への同質化によって、市場シェアの拡大を図る。
B社の市場地位を利用して、小売店でのシェルフ・スペースの確保を、A社をはじめとする競合企業よりも有利に進める。
規模の経済や経験曲線効果を利用して、A社をはじめとする競合企業に対するコスト面での優位性を確立する。

出典:中小企業診断協会|2022年度 第1次試験問題|企業経営理論(PDF)


解答

  • 設問1:ウ
  • 設問2:ア

解説(設問1)

ア:×
 相対市場シェアは「自社シェア ÷ 最大競争相手のシェア」。B社は 0.30 ÷ 0.45 = 0.666… であり、0.30ではない。

イ:×
 0.30 ÷ 0.90 などの誤計算に近い数値。定義に沿えば 0.33 にはならない。

ウ:〇
 0.30 ÷ 0.45 = 0.666… → 小数点第3位四捨五入で 0.67 が正しい。

エ:×
 1.50 は 0.45 ÷ 0.30 の逆比。相対市場シェアの定義に反する。

オ:×
 2.00 は極端に過大で、計算根拠がない。


解説(設問2)

ア:〇
 B社は技術力を有するチャレンジャー。資源の分散投入は非効率で、弱点のある特定セグメントに集中攻撃(ニッチ集中・選択的専門化)が有効。

イ:×
 フォロワー戦略はリーダーを避け模倣・低価格で利を取る立場。B社は対抗可能な技術資源を持ち、シェア拡大を狙うなら受動的な回避は不適切。

ウ:×
 同質化は差別化を弱め、価格競争に陥る。チャレンジャーは差別化・集中により弱点突きを図るのが定石。

エ:×
 シェルフ獲得の交渉力はリーダーほど強くない。B社の地位では一律に有利とはいえない。

オ:×
 規模の経済・経験曲線はリーダーに優位。B社が即座にコスト優位を確立するのは現実的でない。


学習のポイント

  • 相対市場シェアの定義
    自社シェアを最大競争相手のシェアで割る。計算と四捨五入の指示に注意する。
  • チャレンジャーの基本戦略
    全方位ではなく「脆弱セグメントへの集中」。差別化軸を明確化し、選択と集中で攻勢をかける。
  • リーダー・フォロワーとの力学
    リーダーは規模や流通交渉力で優位。フォロワーは模倣・低価格で対抗。チャレンジャーは差別化・集中でシェア奪取を狙う。