過去問解説(企業経営理論)_2022年(令和4年) 第8問

難易度・正答率・重要度

  • 難易度: ★★☆☆☆(起業ロジックの基礎)
  • 正答率: ★★★★☆(正答率70%前後)
  • 重要度: ★★★☆☆(不確実性下の意思決定)

問題文

次の文章の空欄に入る記述として、最も適切なものを下記の解答群から選べ。

エフェクチュエーションは、S.D.サラスバシーが経験豊富な起業家の行動から抽出した実践的なロジックである。

エフェクチュエーションは、________である。


〔解答群〕

成功と失敗の確率が事前に分かっている場合に有効
特定の事業機会における競合分析や市場分析を行う場合に有効
どのような環境に注目し、どのような環境を無視すべきかが不明瞭な場合に有効
目的からさかのぼって手段を考えることができる場合に有効
目的の選好順位が明確な場合に有効

出典:中小企業診断協会|2022年度 第1次試験問題|企業経営理論(PDF)


解答

正解:ウ


解説

ア:×
 成功・失敗の確率が既知の状況は「リスク」領域であり、期待値計算や因果(コーザル)アプローチが有効。エフェクチュエーションは確率が不明な「不確実性」下で機能する。

イ:×
 特定機会の競合・市場分析に基づく計画はコーザルの典型。エフェクチュエーションは分析よりも、手持ち資源から出発し関係者と機会を共創する。

ウ:〇
 何に注目すべきか自体が不明瞭な高不確実環境で、手持ちの手段から出発し可変の目的を共創するエフェクチュエーションが有効。

エ:×
 「目的→手段」の逆算はコーザルの考え方。エフェクチュエーションは「手段→可能な目的」。

オ:×
 目的の選好が明確なら、計画型(コーザル)で十分。エフェクチュエーションは目的が流動的な状況で強みを発揮する。


学習のポイント

  • エフェクチュエーションの概要
    起業家が不確実性下で用いる「手段起点・目的可変」のロジック。手持ち資源と関係者のコミットメントから機会を共創する。
  • 適用場面
    成否確率や注目すべき環境要因が不明瞭な状況(ナイト的不確実性)で有効。既知リスクや明確な目的がある場面はコーザルが適する。
  • コーザルとの対比
    コーザル=目的から逆算し分析・計画で実行。エフェクチュエーション=手段から出発し、行動と関係構築で目的を形成。
  • 主要原則
    負けられる範囲(Affordable Loss)、手中の鳥(Bird-in-Hand)、クレイジーキルト(Crazy Quilt)、レモネード(Lemonade)、操縦士(Pilot-in-the-Plane)。
  • 試験対策のコツ
    「不確実性」「手段起点」「共創」「許容損失」というキーワードが出たらエフェクチュエーション。「目的起点」「分析・計画」はコーザル。