過去問解説(企業経営理論)_2022年(令和4年) 第10問

難易度・正答率・重要度

  • 難易度: ★★☆☆☆(知識創造の基本)
  • 正答率: ★★★★☆(正答率70%前後)
  • 重要度: ★★★☆☆(SECIモデルの周辺知識)

問題文

野中郁次郎が提唱した知識創造理論に基づいて、組織的な知識創造を阻害したり促進したりする要因に関する記述として、最も適切なものはどれか。


経営者の主観的な思いは、組織的な知識創造を阻害する。
組織構成員に自律性を与えると、全体の統制が取れなくなるので、組織的な知識創造は阻害される。
組織構成員に当面必要のない仕事上の情報を重複して共有させると、コミュニケーションに混乱が生じるので、組織的な知識創造は阻害される。
組織構成員に複数の役割を経験させ、多面的に物事を考えさせるようにする と、組織的な知識創造は促進される。
組織構成員間で暗黙知が共有できるまで、外部組織とはできるだけ接触させない方が、組織的な知識創造は促進される。

出典:中小企業診断協会|2022年度 第1次試験問題|企業経営理論(PDF)


解答

正解:エ


解説

ア:×
 知識創造の「意図(Intention)」は重要で、経営者の情熱や志は促進要因。阻害とするのは不適切。

イ:×
 「自律性(Autonomy)」の付与は多様な視点と試行を促し、知識創造を促進する。統制低下=阻害とは限らない。

ウ:×
 「情報の冗長性(Redundancy)」は暗黙知の共有を助け、相互理解を深める促進要因。混乱=阻害という理解は誤り。

エ:〇
 「多義性・重層的な役割経験(Requisite Variety)」により多面的に考える力が高まり、知識創造が促進される。

オ:×
 外部との接触やネットワークは新知識の取り込み・連結に有効。遮断は促進にならない。


学習のポイント

  • SECIモデル(共同化・表出化・連結化・内面化)
    組織内で暗黙知と形式知を循環させ、知識を創造・拡張するプロセス。
  • 促進要因(Nonakaの知識創造5要件)
    意図、自律性、創造的カオス、冗長性、必要な情報多様性(Requisite Variety)が鍵。
  • 冗長性の意義
    必要情報だけでなく重複共有することで、文脈共有と相互理解が進み、暗黙知の移転が促される。
  • 自律性と創造的カオス
    現場の裁量と適度な緊張・課題設定が、探索と学習を加速させる。
  • 外部連携の重要性
    顧客・パートナーとの対話で新しい知識を取り込み、連結化を通じて組織知へ統合する。