過去問解説(企業経営理論)_2022年(令和4年) 第18問

難易度・正答率・重要度

  • 難易度: ★★☆☆☆(組織ライフサイクルの基礎)
  • 正答率: ★★★★☆(正答率70%前後)
  • 重要度: ★★★☆☆(組織発展段階の定番)

問題文

組織のライフサイクル仮説によると、組織は発展段階(起業者段階、共同体段階、公式化段階、精巧化段階)に応じた組織構造、リーダーシップ様式、統制システムをとる。また、組織の発展段階に応じて、組織で支配的となる有効性(組織がその目標を達成した程度)の指標は変化すると考えられる。

組織の発展段階の名称と、各段階で支配的な組織の有効性指標に関する記述の組み合わせとして、最も適切なものを下記の解答群から選べ。


【組織の発展段階】

a 起業者段階/ b 共同体段階/ c 公式化段階/ d 精巧化段階

【組織の有効性指標に関する記述】

① この段階では、人的資源の開発が有効性指標として重要となり、経営者のリーダーシップの下で職場集団の凝集性とモラールを高めることが追求される。

② この段階では、資源獲得と成長が組織の有効性指標として特に重視され、顧客や金融機関などの利害関係者と良好な関係を築くことに中心的な価値が置かれる。

③ この段階では、組織の安定性と統制、ならびに組織の生産性が支配的な有効性指標となり、情報管理システムや業務上の規則と手続きが組織内で広く整備される。

④ この段階では、組織の安定性と統制、ならびに組織の生産性と人的資源の開発を重視しつつ、新たな環境適応のための資源獲得と成長が追求される。


〔解答群〕

a-①  b-②  c-③  d-④
a-①  b-④  c-②  d-③
a-①  b-④  c-③  d-②
a-②  b-①  c-③  d-④
a-②  b-①  c-④  d-③

出典:中小企業診断協会|2022年度 第1次試験問題|企業経営理論(PDF)


解答

正解:エ(a-② b-① c-③ d-④)


解説

a 起業者段階 → ② 資源獲得・成長重視
 創業初期は顧客・資金・人材など外部資源の獲得が最重要。成長のためにステークホルダーとの関係構築が有効性の中心指標となる。

b 共同体段階 → ① 人的資源開発・凝集性・モラール
 急拡大後の組織統合期。トップのリーダーシップの下で文化醸成とチームの結束を高め、能力開発を進めることが有効性の核となる。

c 公式化段階 → ③ 安定性・統制・生産性
 規則・手続き・情報システムを整備し、プロセス管理で生産性と安定を確立。標準化・フォーマル化が有効性指標として支配的になる。

d 精巧化段階 → ④ 安定・生産性・人材開発+再成長
 既存の安定運用を維持しつつ、新環境への適応と再成長のために探索と資源獲得を再度重視する両利きの運営が求められる。


学習のポイント

  • 起業者段階(entrepreneurial)
    資源獲得と成長に集中。顧客開拓・資金調達・人材確保が有効性の主指標。
  • 共同体段階(collectivity)
    凝集性とモラールを高め、人材育成を推進。価値観共有・文化形成が鍵。
  • 公式化段階(formalization)
    標準化・規則・情報システムで統制と生産性を高める。安定運用を最優先。
  • 精巧化段階(elaboration)
    安定と開発を両立し、新たな環境適応へ再成長を追求。探索と活用のバランスが重要。