過去問解説(企業経営理論)_2022年(令和4年) 第19問

難易度・正答率・重要度

  • 難易度: ★★☆☆☆(組織スラックの基礎)
  • 正答率: ★★★★☆(正答率70%前後)
  • 重要度: ★★★☆☆(組織資源管理の定番論点)

問題文

組織均衡を維持するのに必要な資源と、実際にその組織が保有している資源の差を組織スラック(organizational slack)という。組織スラックに関する記述として、最も適切なものはどれか。


好況時には、組織スラックを増やすことを通じて、組織参加者の満足水準が上昇することを抑制できる。
組織スラックが存在しない場合、革新案を探索する際にリスク志向的になる。
組織スラックが存在すると、部門間のコンフリクトが激化する。
組織スラックは、組織革新を遂行するための資源とはならないが、環境変化の影響を吸収するバッファーとしての役割を持つ。
不況期には、組織スラックを組織参加者に放出することによって、短期的に参加者の満足水準を低下させることができる。

出典:中小企業診断協会|2022年度 第1次試験問題|企業経営理論(PDF)


解答

正解:ア


解説

ア:〇
 好況時には組織スラックを増やすことで、参加者の要求水準(満足水準)の上昇を抑制できる。スラックは余裕資源として、組織均衡を維持する役割を果たす。

イ:×
 スラックがない場合、むしろリスク回避的になりやすい。革新探索の余裕がなくなるため、リスク志向的になるとは言えない。

ウ:×
 スラックは部門間の対立を緩和する調整資源として機能する。存在するとコンフリクトはむしろ抑制されやすい。

エ:×
 スラックは革新のための資源にもなり得る。単なるバッファーにとどまらない。

オ:×
 不況期にはスラックを取り崩して参加者に配分することで、短期的に満足水準を維持できる。設問の「低下させる」は誤り。


学習のポイント

  • 組織スラックの定義
    必要資源と保有資源の差。余剰資源とも呼ばれる。
  • スラックの機能
    ・参加者満足水準の調整
    ・部門間コンフリクトの緩和
    ・環境変化のバッファー
    ・革新や新規投資の原資
  • 好況期と不況期の役割
    ・好況期:スラックを蓄積し、参加者の要求水準上昇を抑制
    ・不況期:スラックを放出し、参加者の満足水準を維持
  • 試験対策のコツ
    「スラック=余裕資源」「革新・調整・バッファー機能」「好況期に蓄積、不況期に放出」というキーワードを押さえる。