過去問解説(企業経営理論)_2022年(令和4年) 第22問

難易度・正答率・重要度

  • 難易度: ★☆☆☆☆(人事評価の基礎)
  • 正答率: ★★★★☆(正答率75%前後)
  • 重要度: ★★★☆☆(評価制度運用の実務)

問題文

人事評価における評価基準と評価者に関する記述として、最も適切なものはどれか。


360 度評価では、評価者からのフィードバックの客観性を高めるために、従業員が所属している部門内の直属の上司、同僚、部下に範囲を絞って評価者を設定することが望ましい。
コンピテンシー評価とは、優れた業績をあげるための知能や性格といった従業員の潜在的な特性に基づいて、従業員の職務成果を評価する手法を指す。
従業員に自らの職務成果を自己評価させることには、従業員と上司との間で職務成果に関する議論が活発になる利点がある。
上司の職務成果を直属の部下に評価させる場合は、不正確な評価を行った部下に対して上司が指導を事後的に行えるように、記名式で評価させることが望ましい。
組織におけるエンパワーメントの考え方に従えば、従業員の職務成果の評価者を直属の上司に限定し、従業員による自己評価の機会を認めるべきではない。

出典:中小企業診断協会|2022年度 第1次試験問題|企業経営理論(PDF)


解答

正解:ウ


解説

ア:×
 360度評価は多方面(上司・同僚・部下・他部門・顧客など)から幅広く評価者を設定してバイアスを緩和する。部門内に範囲を絞るのは客観性を損ねやすい。

イ:×
 コンピテンシー評価は「行動特性・行動基準(成果につながる実行行動)」を評価する枠組み。知能・性格など潜在特性そのものや成果評価とは異なる。

ウ:〇
 自己評価は目標・成果認識のすり合わせを促し、上司との対話を活性化する。期待の明確化や改善点の合意形成に有効。

エ:×
 上司評価を部下が行う際は、誠実な回答を得るために匿名性を確保するのが一般的。記名式はバイアスや萎縮を招きやすい。

オ:×
 エンパワーメントは自律性・参画を重視する。評価者を上司に限定したり自己評価を排除する方向とは一致しない。


学習のポイント

  • 360度評価の設計
    上司・同僚・部下・他部門・顧客など多面的に設定し、匿名・フィードバック設計で信頼性を高める。
  • コンピテンシーの本質
    高業績者に共通する具体的な行動特性を定義し、その発揮度を評価する。性格や成果そのものとは区別。
  • 自己評価の効用
    目標整合、自己認識の向上、上司との合意形成。評価面談の質を高める。
  • 匿名性の重要性
    上下評価・同僚評価では匿名が回答の正直さと有用性を担保する。
  • エンパワーメントと評価
    参加型・対話型の評価運用(自己評価・目標設定の共創)が適合しやすい。